活動報告

国際交流活動

名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センターは、学術交流協定を結んでいる米国をはじめとする海外の大学の教員や臨床研修生を受け入れ、講義への参加、関連医療施設の見学、ディスカッションを通し、研究・教育の交流を行っています。名古屋大学医学部附属病院における研修では、名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センターサテライトセミナー室を拠点として、当部門のアドバンスト学生や配属学生と共に臨床研修を行います。また、アドバンスト学生は病棟・薬剤師外来や関連医局での活動を中心に、臨床研修・症例や研究内容を英語で紹介します。交流を深めるためにも、日米の薬学教育や文化についても議論します。

2024年1月10日〜16日

米国アリゾナ大学薬学部から臨床研修生Jason Soldatenkovさんが名古屋大学医学部附属病院および病態解析学Ⅰを訪問

米国アリゾナ大学薬学部4年生Jason Soldatenkovさんが日本における臨床薬学教育研修の一環として、名古屋大学医学部附属病院(名大病院)および病院内に設置された名城大学薬学部 サテライトセミナー室 病態解析学Ⅰにて臨床研修を実施しました。新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行されたことで規制が緩和され、約5年ぶりの訪問となりました。

 

〇10日午前

1)臨床研修Ⅰ(薬学教育、大学・当室・メンバー紹介):最初にサテライトセミナー室にて野田幸裕教授、吉見 陽准教授が当室の活動や研究内容、日本の薬学部のカリキュラムについてスライドで説明しました。臨床研修生は、6年制に変わった日本の薬学教育などについて真剣に聞いていました。その後、当室のメンバーがそれぞれ自己紹介しました。臨床研修生にもアリゾナ大学薬学部での薬学教育やキャンパスライフについて紹介してもらいました。アリゾナ大学はツーソンのメインキャンパスに加えフェニックスのキャンパスにも薬学部が設置されており、衛星通信にて異なる場所に居ても同時に同じ講義を受講できることに、大変驚きました。

午後からは八事キャンパスにおいて病院薬学 亀井浩行教授の1年生のキャリア形成の授業に参加しました。

 

〇11日午前

  • 臨床研修Ⅱ(病院内見学):総合診療科の病棟およびCKD外来を見学しました。総合

診療科の病棟では全室個室でゆったりと過ごすことが出来る病室を見てもらいました。CKD外来では医師・薬剤師・栄養士が連携することでCKDの患者に対して医学的・薬学的な介入のみならず、食塩摂取量の管理などの栄養療法も行うため、こうした多職種との連携の様子を知ることができました。その後、名大病院の薬剤部や外来棟を見学し、薬剤部の宮崎雅之副薬剤部長に外来化学療法室における薬剤師や多職種との連携について説明を受けました。薬剤部の見学では、調剤ロボットによる注射剤の自動払い出し、バーコードによる調剤監査システム、試験室での薬物血中濃度モニタリング(TDM)業務、麻薬の取り扱いなどについて説明しました。臨床研修生は特に製剤室内にある抗がん薬混合調製ロボットであるChemoRo(ケモロ)には強く興味を示していました。午後からは、八事キャンパスにて拡大教授会で自己紹介を行った後、日本文化Ⅰに参加しました。

〇11日午後

2)日本文化Ⅰ(大須散策・東山動物園):大須観音にておみくじを引いたり、日本の典型的な商店街である大須商店街にて唐揚げの食べ歩きをしながら散策し、大須の街並みを堪能しました。その後、東山動物園にて、レッサーパンダやイケメンゴリラのシャバーニなど、日本の数多くの動物を観ました。臨床研修生は動物たちの生き生きとした姿を写真に収めて楽しんでいました。

 

〇12日午前

1)臨床研修Ⅲ(アドバンスト活動紹介):名大病院のアドバンストコース5年生3名が精神科/親と子どもの心療科、血液内科と総合診療科の病棟の特徴、各病棟での活動内容、および症例報告を行いました。その後、臨床研修生からも白血病患者の症例を報告してもらいました。米国では公的医療保険制度が高齢者や障害者に限定されていることから、国民の医療保障の大部分は民間医療保険によって担われています。加入している保険が個々で異なるため、加入保険に応じて医療費を考慮して治療や治療薬を選択しなくてはいけないことを学びました。

2)臨床研修Ⅳ(病棟見学):精神科/親と子どもの心療科、眼科および消化器外科の病棟を見学しました。各病棟の特徴や他の病棟との運用の違い、救急カートや定数配置薬などの説明を通して、病棟薬剤師の業務内容を紹介しました。特に、精神科病棟では患者ごとに薬の管理方法が異なり、医療従事者によって厳重に薬が管理されている場合が多いことなどを説明しました。臨床研修生は、病棟やナースステーションに入るには鍵が必要となることやモニターで様子を確認できる病室があることなど、他の病棟との違いに興味をもったようでした。

〇12日午後

3)日本文化Ⅱ(ちらし寿司):臨床研修生に和食文化を体験してもらうために、昼食にちらし寿司やお味噌汁を用意し、ご飯にちらし寿司の素や細かく刻んだ具材を入れて混ぜてもらいました。臨床研修生は自身で作ったちらし寿司の味に感動し、和気あいあいと和食を楽しみました。

4)臨床研修Ⅴ:薬剤部の研究室を訪問し、薬剤部・医療薬学の溝口博之准教授に薬剤部で実施している臨床・基礎研究の概要を説明してもらいました。

5)臨床研修Ⅵ(体験実験):当室において研究の一環で行っているジェノタイピング(遺伝子型判定)について、当室の学部生が概要を説明し、慣れない実験操作に苦戦しながらも、DNAバンドの検出、遺伝子型の判定を体験してもらいました。その後、八事キャンパスでの歓迎会に参加しました。

 

〇16日午前

1)臨床研修Ⅶ(病棟見学・薬剤師外来):早朝から感染制御専門薬剤師である名城大学薬学部 実践薬学Ⅰ 稲垣孝行准教授の引率のもと、外科系集中治療室(SICU)にてカンファレンスに参加し、薬剤師の役割や多職種との連携、集中治療室(ICU)やNICUとの違いについて説明を受けました。集中治療領域では,集中治療を要する患者の薬学的管理に加えて集中治療室退室後の患者に対する薬学的管理も重要であることを日米で情報交換ができたことに満足のようでした。HIV薬剤師外来を見学した後、当室における薬剤師外来(吸入療法支援)の活動について説明を受けました。臨床研修生と意見を交わすことで、吸入器(デバイス)や吸入指導は日米において大差がないことを知ることができました。

〇16日午後

2)日本文化Ⅲ(お弁当):本日で名大病院での研修が最後であることから、臨床研修生の送別会を兼ねて、昼食に日本文化の“お弁当”として海苔弁当を用意しました。臨床研修生は嬉しそうに「美味しい」と舌鼓を打ちながら、4日間の研修を振り返っていました。終始、和やかな雰囲気のまま楽しい時間を過ごすことができ、お腹も心も満たされた送別会としての昼食となりました。

3)日本文化Ⅳ(書道):日本文化の一環として書道を体験してもらいました。学部生が横で手本を見せながら臨床研修生に漢字の意味を教え、気に入った漢字を書いてもらいました。臨床研修生は器用に筆を使って「名古屋」や「薬」などの漢字を書き、日本人顔負けの素晴らしいお手並みを披露しました。作品完成後は記念撮影を行い、楽しい時間を過ごしました。

 

今回、臨床研修生が来室した4日間は臨床研修生と当室のメンバーが多くの時間を共有してお互いに有意義な時間を過ごすことができたと思います。臨床研修生と日米の病院薬剤師業務や診療ガイドラインの内容などについて意見を交わし合い交流を深めることで、双方の相違点について学ぶことができました。

(報告者:雄谷拓海、深見彩乃)