活動報告

国際交流活動

名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センターは、学術交流協定を結んでいる米国をはじめとする海外の大学の教員や臨床研修生を受け入れ、講義への参加、関連医療施設の見学、ディスカッションを通し、研究・教育の交流を行っています。名古屋大学医学部附属病院における研修では、名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センターサテライトセミナー室を拠点として、当部門のアドバンスト学生や配属学生と共に臨床研修を行います。また、アドバンスト学生は病棟・薬剤師外来や関連医局での活動を中心に、臨床研修・症例や研究内容を英語で紹介します。交流を深めるためにも、日米の薬学教育や文化についても議論します。

9月24日

米国アリゾナ大学薬学部から臨床研修生Adriana Carbajalさんが名古屋大学医学部附属病院および病態解析学Ⅰを訪問

名城大学薬学部では海外から数多くの薬学生や薬学臨床教員・研究者を受け入れ、教育と研究の両面で国際的な役割を果たしています。特に、教員や薬学生の国際的な視野を広げる目的で、米国の南カリフォルニア大学薬学部、サンフォード大学薬学部やアリゾナ大学薬学部との間に学術交流協定を結び、これらの協定大学を中心に国際的な研究・教育活動を実施しています。

昨年度に引き続き米国アリゾナ大学薬学部から4年生Adriana Carbajalさんが日本における臨床薬学教育研修の一環として、名城大学薬学部と関連医療施設などで、臨床研修(2024年9月16日~9月28日)を行いました

臨床研修は、名城大学の協定病院である名古屋大学医学部附属病院(名大病院)および病院内に設置された名城大学薬学部 サテライトセミナー室 病態解析学Ⅰにて臨床研修を9月24日(火)に実施しました。

〇午前

1)臨床研修Ⅰ:野田幸裕教授が宮崎雅之副薬剤部長と共に外来化学療法室を訪問しました。

2)臨床研修Ⅱ(薬学教育、大学・当室・メンバー紹介):最初にサテライトセミナー室にて野田幸裕教授、𠮷見 陽准教授が日本の薬学部のカリキュラムや当室の活動や研究内容についてスライドで説明しました。臨床研修生は、6年制に変わった日本の薬学教育などについて興味深く聞いていました。その後、当室のメンバーがそれぞれ自己紹介しました。名大病院のアドバンストコース5年生3名は自己紹介の中で今までの病棟実習で関わった症例についても紹介しました。

臨床研修生にもアリゾナ大学薬学部での薬学教育やキャンパスライフについて紹介してもらいました。アリゾナ大学はツーソンのメインキャンパスに加えフェニックスキャンパスにも薬学部が設置されており、異なる場所に居ても同じ講義を同時に通信システムにて受講できることに大変驚きました。臨床研修生からは化学療法による悪心・嘔吐の制吐治療についての症例報告を行なってもらいました。催吐性リスクに応じた制吐薬の使い分けやフルオロウラシルで治療中の患者さんに対してどのような制吐剤が使用されるのかについて説明して頂き、日本における制吐療法との相違点を学ぶことができ、大変興味深く拝聴することができました。

 

〇午後

3)日本文化(和食):昼食には臨床研修生に和食文化の紹介として、おにぎりやたこ焼きなどを用意し、和食文化について理解を深めてもらいました。実際におにぎりを握ってもらいましたが、初めての経験だったため、少し苦戦している様子でした。臨床研修生は嬉しそうに「美味しい」と舌鼓を打ちながら、和気あいあいと款談しました。臨床研修生は、明太子のふりかけを混ぜたおにぎりが一番のお気に入りとのことでした。

 

4)臨床研修Ⅲ:(薬剤部見学):アドバンストコースの学部5年3名と野田幸裕教授、𠮷見 陽准教授、溝口博之准教授と共に薬剤部の見学を行いました。調剤室・製剤室・麻薬室・試験室・注射室・薬務室を見学しました。製剤室では薬剤部の宮崎雅之副薬剤部長に抗がん剤混合調製ロボットについて説明を受け、とても興味を示していました。注射室にある注射薬自動支出システムに対しても目を見張る様子でした。

当室で行っている薬剤師外来(吸入療法支援)について、実際の練習用吸入器を用いて説明しました。臨床研修生は吸入器の知識は豊富でしたが、当室で使用している吸入指導の資料を見せながら説明し、吸入指導ついてより理解を深めて頂きました。臨床研修生と意見を交わすことで、吸入器(デバイス)や吸入指導は日米において大差がないことを学びました。

 

5) 臨床研修Ⅳ:(病棟見学):病棟薬剤師の業務内容や各病棟の特徴を紹介するために眼科病棟と精神科/親と子どもの心療科を担当病棟薬剤師と共に見学しました。眼科の一般病棟では、一般病棟の特徴、麻薬、毒薬および向精神薬の管理方法を説明し、病棟薬剤師の業務内容を紹介しました。精神科/親と子ども病棟ではホールや中庭にて作業療法として塗り絵やストレッチ、卓球などを行うこと、一般病棟とは異なる設備や保護室があることを説明しました。病棟やナースステーションなどの入り口は施錠されており、一般病棟との違いを感じていました。

 

今回、海外臨床研修生と日米の病院薬剤師業務について意見交換を行うことで、双方の相違点について学ぶことができました。積極的に会話することや患者個々に合わせた医療を提供することなど、改めて薬剤師に必要な態度・知識・能力について考える良い機会となり、刺激を受けた1日となりました。

 

(報告者:井指孝一)

2024年9月15~16日

The 9th Nagoya / Gifu / Nanjing / Shenyang Symposium of Pharmaceutical Sciences(名古屋)

「The 9th Nagoya / Gifu / Nanjing / Shenyang Symposium of Pharmaceutical Sciences」が、名古屋市立大学大学院薬学研究科 田辺通キャンパスにて開催されました。本薬学学術シンポジウムは、名城大学が学術協定を結ぶ中国薬科大学および瀋陽薬科大学との学術交流を目的として開催されました。2日間で、基礎から臨床研究まで多岐にわたる口頭発表33演題、ポスター発表74演題があり、演題ごとに活発な討論が行われました。

当室からは野田幸裕教授が名城大学実行委員として、座長を務められました。当室より𠮷見 陽准教授、研究員の中村真理子先生、博士課程1年の加納正暉先輩、学部6年の加藤朱莉、深見彩乃、雄谷拓海、川合竣也、五十住優弥、森川和那、木村天音および加藤拓真の計11名がポスター発表を行いました。いずれの発表においても、発表終了後まで実験方法や結果の質疑ならびに研究の考察について意見交換があり、大変貴重な交流をすることが出来ました。

中国薬系大学の口頭発表では、非アルコール性脂肪肝炎モデルマウスを用いた薬剤の有効性を検討した発表を拝聴しました。モデルマウスを作製して病態生理や治療薬の有効性を検討するという当室の研究と共通した研究発表であり、興味深く拝聴することができました。国際的な視野を持った研究の必要性を再認識するきっかけとなりました。日中間の幅広い薬学系分野の研究発表を聴講することで、当室とは違う研究分野・デザインについて触れ、視野も広げることができ大変有意義な機会となりました。

(報告者:雄谷拓海)

【座長】
野田幸裕(9月15日)
「Oral session 8」
【ポスター発表】
𠮷見 陽(9月15日)
「Spatial brain proteomic analysis using a schizophrenia-like model mouse treated with clozapine」
中村真理子(9月15日)
「Involvement of serotonin transporter in chronic orofacial pain with depressive symptoms before and after duloxetine treatment」
加納正暉(9月15日)
「Inhalation therapy for patients with bronchial asthma during the COVID-19 pandemic: appropriate instructions amidst infectious disease spread」
深見彩乃(9月15日)
「Involvement of adrenaline beta2 receptors in clozapine-induced lipid droplet accumulation in 3T3-L1 cells」
五十住優弥(9月15日)
「Involvement of TNF-α/TNFR1 signaling in microglia and glutamatergic neurotransmission of mice exposed to social defeat stress as juveniles」
加藤朱莉(9月15日)
「Effect of lithium on hematopoietic toxicity induced by clozapine in HL-60 cells」
加藤拓真(9月15日)
「Mice with deficiency in Pcdh15, a gene associated with bipolar disorders (BD), exhibit BD-like behaviors and monoaminergic properties」
川合竣也(9月15日)
「Effect of clozapine on cognitive behaviors function and neurotransmitters in a schizophrenia-like mouse model」
木村天音(9月15日)
「Influence of environment adversity during neurodevelopment on future behavioral responses and neuromorphogenesis in astrotactin2 (ASTN2) heterozygous mice」
森川和那(9月15日)
「Involvement of nicotinic acetylcholine receptor α7 subunit in the impairment of social behaviors in mice exposed to social defeat stress as juveniles.」
雄谷拓海(9月15日)
「Comprehensive gene expression analysis of lymphoblastoid cell lines from schizophrenia patients and blood and brain samples from a schizophrenia-like mouse model.」

2024年1月10日〜16日

米国アリゾナ大学薬学部から臨床研修生Jason Soldatenkovさんが名古屋大学医学部附属病院および病態解析学Ⅰを訪問

米国アリゾナ大学薬学部4年生Jason Soldatenkovさんが日本における臨床薬学教育研修の一環として、名古屋大学医学部附属病院(名大病院)および病院内に設置された名城大学薬学部 サテライトセミナー室 病態解析学Ⅰにて臨床研修を実施しました。新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行されたことで規制が緩和され、約5年ぶりの訪問となりました。

 

〇10日午前

1)臨床研修Ⅰ(薬学教育、大学・当室・メンバー紹介):最初にサテライトセミナー室にて野田幸裕教授、吉見 陽准教授が当室の活動や研究内容、日本の薬学部のカリキュラムについてスライドで説明しました。臨床研修生は、6年制に変わった日本の薬学教育などについて真剣に聞いていました。その後、当室のメンバーがそれぞれ自己紹介しました。臨床研修生にもアリゾナ大学薬学部での薬学教育やキャンパスライフについて紹介してもらいました。アリゾナ大学はツーソンのメインキャンパスに加えフェニックスのキャンパスにも薬学部が設置されており、衛星通信にて異なる場所に居ても同時に同じ講義を受講できることに、大変驚きました。

午後からは八事キャンパスにおいて病院薬学 亀井浩行教授の1年生のキャリア形成の授業に参加しました。

 

〇11日午前

  • 臨床研修Ⅱ(病院内見学):総合診療科の病棟およびCKD外来を見学しました。総合

診療科の病棟では全室個室でゆったりと過ごすことが出来る病室を見てもらいました。CKD外来では医師・薬剤師・栄養士が連携することでCKDの患者に対して医学的・薬学的な介入のみならず、食塩摂取量の管理などの栄養療法も行うため、こうした多職種との連携の様子を知ることができました。その後、名大病院の薬剤部や外来棟を見学し、薬剤部の宮崎雅之副薬剤部長に外来化学療法室における薬剤師や多職種との連携について説明を受けました。薬剤部の見学では、調剤ロボットによる注射剤の自動払い出し、バーコードによる調剤監査システム、試験室での薬物血中濃度モニタリング(TDM)業務、麻薬の取り扱いなどについて説明しました。臨床研修生は特に製剤室内にある抗がん薬混合調製ロボットであるChemoRo(ケモロ)には強く興味を示していました。午後からは、八事キャンパスにて拡大教授会で自己紹介を行った後、日本文化Ⅰに参加しました。

〇11日午後

2)日本文化Ⅰ(大須散策・東山動物園):大須観音にておみくじを引いたり、日本の典型的な商店街である大須商店街にて唐揚げの食べ歩きをしながら散策し、大須の街並みを堪能しました。その後、東山動物園にて、レッサーパンダやイケメンゴリラのシャバーニなど、日本の数多くの動物を観ました。臨床研修生は動物たちの生き生きとした姿を写真に収めて楽しんでいました。

 

〇12日午前

1)臨床研修Ⅲ(アドバンスト活動紹介):名大病院のアドバンストコース5年生3名が精神科/親と子どもの心療科、血液内科と総合診療科の病棟の特徴、各病棟での活動内容、および症例報告を行いました。その後、臨床研修生からも白血病患者の症例を報告してもらいました。米国では公的医療保険制度が高齢者や障害者に限定されていることから、国民の医療保障の大部分は民間医療保険によって担われています。加入している保険が個々で異なるため、加入保険に応じて医療費を考慮して治療や治療薬を選択しなくてはいけないことを学びました。

2)臨床研修Ⅳ(病棟見学):精神科/親と子どもの心療科、眼科および消化器外科の病棟を見学しました。各病棟の特徴や他の病棟との運用の違い、救急カートや定数配置薬などの説明を通して、病棟薬剤師の業務内容を紹介しました。特に、精神科病棟では患者ごとに薬の管理方法が異なり、医療従事者によって厳重に薬が管理されている場合が多いことなどを説明しました。臨床研修生は、病棟やナースステーションに入るには鍵が必要となることやモニターで様子を確認できる病室があることなど、他の病棟との違いに興味をもったようでした。

〇12日午後

3)日本文化Ⅱ(ちらし寿司):臨床研修生に和食文化を体験してもらうために、昼食にちらし寿司やお味噌汁を用意し、ご飯にちらし寿司の素や細かく刻んだ具材を入れて混ぜてもらいました。臨床研修生は自身で作ったちらし寿司の味に感動し、和気あいあいと和食を楽しみました。

4)臨床研修Ⅴ:薬剤部の研究室を訪問し、薬剤部・医療薬学の溝口博之准教授に薬剤部で実施している臨床・基礎研究の概要を説明してもらいました。

5)臨床研修Ⅵ(体験実験):当室において研究の一環で行っているジェノタイピング(遺伝子型判定)について、当室の学部生が概要を説明し、慣れない実験操作に苦戦しながらも、DNAバンドの検出、遺伝子型の判定を体験してもらいました。その後、八事キャンパスでの歓迎会に参加しました。

 

〇16日午前

1)臨床研修Ⅶ(病棟見学・薬剤師外来):早朝から感染制御専門薬剤師である名城大学薬学部 実践薬学Ⅰ 稲垣孝行准教授の引率のもと、外科系集中治療室(SICU)にてカンファレンスに参加し、薬剤師の役割や多職種との連携、集中治療室(ICU)やNICUとの違いについて説明を受けました。集中治療領域では,集中治療を要する患者の薬学的管理に加えて集中治療室退室後の患者に対する薬学的管理も重要であることを日米で情報交換ができたことに満足のようでした。HIV薬剤師外来を見学した後、当室における薬剤師外来(吸入療法支援)の活動について説明を受けました。臨床研修生と意見を交わすことで、吸入器(デバイス)や吸入指導は日米において大差がないことを知ることができました。

〇16日午後

2)日本文化Ⅲ(お弁当):本日で名大病院での研修が最後であることから、臨床研修生の送別会を兼ねて、昼食に日本文化の“お弁当”として海苔弁当を用意しました。臨床研修生は嬉しそうに「美味しい」と舌鼓を打ちながら、4日間の研修を振り返っていました。終始、和やかな雰囲気のまま楽しい時間を過ごすことができ、お腹も心も満たされた送別会としての昼食となりました。

3)日本文化Ⅳ(書道):日本文化の一環として書道を体験してもらいました。学部生が横で手本を見せながら臨床研修生に漢字の意味を教え、気に入った漢字を書いてもらいました。臨床研修生は器用に筆を使って「名古屋」や「薬」などの漢字を書き、日本人顔負けの素晴らしいお手並みを披露しました。作品完成後は記念撮影を行い、楽しい時間を過ごしました。

 

今回、臨床研修生が来室した4日間は臨床研修生と当室のメンバーが多くの時間を共有してお互いに有意義な時間を過ごすことができたと思います。臨床研修生と日米の病院薬剤師業務や診療ガイドラインの内容などについて意見を交わし合い交流を深めることで、双方の相違点について学ぶことができました。

(報告者:雄谷拓海、深見彩乃)