活動報告

研究活動

基礎・臨床研究で得られた成果は、積極的に国内外の精神神経薬理学、神経科学および医療薬学関連の学会や研究会にて報告し、世界を見据えて広く社会に発信しています。また、招待講演やシンポジウムなどにおいても多数発表を行っています。

2024年11月2日~4日

第34回 日本医療薬学会年会(千葉)

「第34回 日本医療薬学会年会」が、「未来の医療をデザインする薬学・薬剤師の視点」をテーマに、幕張メッセおよびTKP東京ベイ幕張ホールを主会場とした現地開催とWEB開催を併用したハイブリッド形式で開催されました。本年会は医薬品開発に必要なデータ解析や臨床研究、医薬品の適正使用を推進する取り組みから、薬剤師の質を担保する教育研修までの幅広い領域の薬学・薬剤師の視点をもった研究者が一同に会し、活発な討論・議論が行われ、盛会裏に終了しました。

当室からは野田幸裕教授がシンポジウム46「向精神病薬と自動車運転-エビデンスの社会実装と適切な薬剤指導-」においてオーガナイザー・座長/趣旨説明を務められました。向精神病薬添付文書では、副作用が少ない標準的治療薬でも運転禁止が規定されていますが、精神疾患の社会復帰や就労を考える際に、運転業務を必須とする場合は少なくありません。向精神病薬がどの程度、自動車運転に影響を与えるかは、客観的に明確にされていませんが、運転シミュレーターを用いて運転の横揺れの程度を測定することで、向精神病薬の服用により自動車運転に及ぼす影響を評価する方法を学びました。向精神病薬の服用による自動車運転への影響を科学的に理解し、適切な服薬指導を行うことで有効・安全な向精神病薬の服用に繋げられるよう学んでいきたいと思います。

博士課程1年の加納正暉先輩および学部6年の加藤朱莉が一般演題(ポスター)にて発表を行いました。いずれの発表でも多くの臨床薬剤師や研究者からご質問をいただき、臨床への還元方法や各病院の問題点などの意見交換を行うことができました。シンポジウム3「医療薬学×臨床検査医学 臨床検査のアップデートによる薬物治療の革新」では、治療抵抗性統合失調症に用いるクロザピンの血中濃度測定において、クロザピン濃度の個人差、コストおよび検査にかかる時間など実臨床での現実的な問題点を知りました。薬剤師が血中濃度測定の必要性を理解し、体制構築へ働きかけることがクロザピンの服用に重要であると実感しました。

本年会で得られた知見を今後の研究・臨床活動に活かし、より一層精進したいと思います。

(報告者:加藤朱莉)

【オーガナイザー・座長/趣旨説明】
野田幸裕(11月3日)
シンポジウム46「向精神病薬と自動車運転-エビデンスの社会実装と適切な薬剤指導-」
【一般演題(ポスター)】
加納正暉(11月3日)
「地域薬局におけるコロナ禍での気管支喘息患者における吸入指導の現状:感染症拡大状況での適切な吸入指導に向けて」
加藤朱莉(11月3日)
「統合失調症入院患者の有効かつ安全な減薬・減量の確立に向けて:名古屋大学医学部附属病院における処方の実態調査」

2024年9月21日~22日

第8回日本精神薬学会総会・学術集会(東京)

「第8回 日本精神薬学会総会・学術集会」が、昭和大学上條記念会館にて「無限の可能性を求めて創る精神科薬薬連携~さぁ、Next Stageへ~」をテーマに開催されました。全国より精神薬学を専門とする薬局・病院の臨床薬剤師や大学・企業の基礎研究者・教員・学生が493名参加し、熱心な討論が交わされました。

当室からは学部6年の加藤朱莉、加藤拓真がポスター発表を行いました。いずれの発表でも発表時間の終了まで多数の参加者から質問をいただき、大変好評でした。今回初めて精神薬学を専門とする学会に参加し、臨床薬剤師・研究者それぞれの視点から細胞を用いた研究やモデルマウスを用いた研究の妥当性や解釈、今後の臨床への還元方法など、多くのご意見を頂くことが出来ました。学部2年生の薬学生には結果の説明だけではなく、行動学的・神経化学的検討で得られた結果の捉え方や、どのような疾患のモデルマウスを使用し、どのように薬剤を選択したのかなど、基本的な内容についても丁寧に解説をしました。本会に参加したことで、精神疾患に対する薬学的介入について様々な研究発表や講演を聴講し、知識を深め、自己研鑽することの重要性を改めて学びました。

なお、本会において、加藤朱莉および加藤拓真が日本精神薬学賞を受賞しました。

 

2025年度は北里大学白金キャンパス(東京)で「虹色に輝く未来に 心に届く薬を届けよう」をテーマに開催される予定です。

(報告者:加藤拓真)

【ポスター発表】
加藤朱莉(9月21日)
「HL-60細胞でのクロザピンによる血液毒性に対するリチウムの作用」
加藤拓真(9月21日)
「プロトカドヘリン15(Pcdh15)遺伝子変異マウスにおける高次脳機能と脳内アミノ酸神経の変容」

2024年9月15~16日

The 9th Nagoya / Gifu / Nanjing / Shenyang Symposium of Pharmaceutical Sciences(名古屋)

「The 9th Nagoya / Gifu / Nanjing / Shenyang Symposium of Pharmaceutical Sciences」が、名古屋市立大学大学院薬学研究科 田辺通キャンパスにて開催されました。本薬学学術シンポジウムは、名城大学が学術協定を結ぶ中国薬科大学および瀋陽薬科大学との学術交流を目的として開催されました。2日間で、基礎から臨床研究まで多岐にわたる口頭発表33演題、ポスター発表74演題があり、演題ごとに活発な討論が行われました。

当室からは野田幸裕教授が名城大学実行委員として、座長を務められました。当室より𠮷見 陽准教授、研究員の中村真理子先生、博士課程1年の加納正暉先輩、学部6年の加藤朱莉、深見彩乃、雄谷拓海、川合竣也、五十住優弥、森川和那、木村天音および加藤拓真の計11名がポスター発表を行いました。いずれの発表においても、発表終了後まで実験方法や結果の質疑ならびに研究の考察について意見交換があり、大変貴重な交流をすることが出来ました。

中国薬系大学の口頭発表では、非アルコール性脂肪肝炎モデルマウスを用いた薬剤の有効性を検討した発表を拝聴しました。モデルマウスを作製して病態生理や治療薬の有効性を検討するという当室の研究と共通した研究発表であり、興味深く拝聴することができました。国際的な視野を持った研究の必要性を再認識するきっかけとなりました。日中間の幅広い薬学系分野の研究発表を聴講することで、当室とは違う研究分野・デザインについて触れ、視野も広げることができ大変有意義な機会となりました。

(報告者:雄谷拓海)

【座長】
野田幸裕(9月15日)
「Oral session 8」
【ポスター発表】
𠮷見 陽(9月15日)
「Spatial brain proteomic analysis using a schizophrenia-like model mouse treated with clozapine」
中村真理子(9月15日)
「Involvement of serotonin transporter in chronic orofacial pain with depressive symptoms before and after duloxetine treatment」
加納正暉(9月15日)
「Inhalation therapy for patients with bronchial asthma during the COVID-19 pandemic: appropriate instructions amidst infectious disease spread」
深見彩乃(9月15日)
「Involvement of adrenaline beta2 receptors in clozapine-induced lipid droplet accumulation in 3T3-L1 cells」
五十住優弥(9月15日)
「Involvement of TNF-α/TNFR1 signaling in microglia and glutamatergic neurotransmission of mice exposed to social defeat stress as juveniles」
加藤朱莉(9月15日)
「Effect of lithium on hematopoietic toxicity induced by clozapine in HL-60 cells」
加藤拓真(9月15日)
「Mice with deficiency in Pcdh15, a gene associated with bipolar disorders (BD), exhibit BD-like behaviors and monoaminergic properties」
川合竣也(9月15日)
「Effect of clozapine on cognitive behaviors function and neurotransmitters in a schizophrenia-like mouse model」
木村天音(9月15日)
「Influence of environment adversity during neurodevelopment on future behavioral responses and neuromorphogenesis in astrotactin2 (ASTN2) heterozygous mice」
森川和那(9月15日)
「Involvement of nicotinic acetylcholine receptor α7 subunit in the impairment of social behaviors in mice exposed to social defeat stress as juveniles.」
雄谷拓海(9月15日)
「Comprehensive gene expression analysis of lymphoblastoid cell lines from schizophrenia patients and blood and brain samples from a schizophrenia-like mouse model.」

2024年8月17日~18日

第9回日本薬学教育学会大会

「第9回日本薬学教育学会大会」が、東京薬科大学にて「薬学教育におけるプロフェッショナリズムとは?」をテーマに開催されました。薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)では、従来の「薬剤師としての心構え」と「患者・生活者本位の視点」が「プロフェッショナリズム」として発展されました。医療プロフェッショナリズムでは何をどう教えるか、大学や医療現場からその取り組みがシンポジウムや一般演題にて多く報告されていました。1日目は、大型で猛烈な台風7号の影響で、前日の首都圏をはじめ各地で鉄道の運休、新幹線各線の計画運休などにより、オンラインでの発表もありましたが、薬学教育に関わる参加者との交流や、薬学教育・研究についての討議を行う貴重な情報交換の機会でありました。

当室からは、シンポジウム8「これからの多職種連携教育の学修プログラムと課題を共に考える」にて、野田幸裕が「医療系学部を有さない薬学部における多職種連携教育:他施設との共同による段階的なプログラム」について発表しました。各専門職からの発表後には、情報共有・交換として総合討論が行われました。多職種が連携するチーム医療教育の課題が再確認され、学部教育だけでなく、医療現場での教育連携・協力体制やプラットフォームの構築が必要であると思いました。

(報告者:野田幸裕)

【シンポジウム】
シンポジウム8:これからの多職種連携教育の学修プログラムと課題を共に考える
野田幸裕(8月18日)シンポジスト
「医療系学部を有さない薬学部における多職種連携教育:他施設との共同による段階的なプログラム」

2024年7月6日~7日

医療薬学フォーラム2024/第32回クリニカルファーマシーシンポジウム(熊本)

「医療薬学フォーラム2024/第32回クリニカルファーマシーシンポジウム」が、熊本市民会館シア
ーズホーム夢ホール/熊本市国際交流会館にて開催されました。医薬品開発や臨床業務を含む
医療において、人工知能(AI)やデジタル化(DX)などの導入により、医療環境は大きく変化してい
ます。日本の医療薬科学の歴史と伝統のある本フォーラムでは、『継続と変革の融合 ~新たな絆
で築く、地域社会に貢献する医療薬学~』をテーマに、医療薬科学・薬剤師の継続と変革につい
て議論を交わし、情報交換できた大会でした。
当室からは、野田幸裕がシンポジウム8『薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)
に対応した薬学共用試験OSCEのあり方』のオーガナイザー・座長を務め、同セッションにて発表
を行いました。多数の各専門分野の研究者や薬剤師、学部学生・大学院生がそれぞれの新しい
視点から、意欲的で対面ならではの熱気に満ちた発表と活発な議論が交わされていました。すっ
かり、コロナ禍から脱出した実りある対面での学術集会の場でした。

(報告者:野田幸裕)

【オーガナイザー・座長】
野田幸裕
シンポジウム8「薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)に対応した薬学共用試
験OSCEのあり方」』
野田幸裕
「OverView:新しいコアカリに対応した薬学共用試験 OSCE」

2024年7月6日

第70回日本薬学会東海支部総会・大会(名古屋)

「第70回日本薬学会東海支部総会・大会」が金城学院大学薬学部にて開催されました。本会では、化学系薬学、生物系薬学、物理系薬学、医療系薬学等に関する研究者が130名以上参加し、いずれのセッションでも活発に討論されていました。

当室からは学部6年の木村天音が一般演題(口頭発表)「Astn2遺伝子変異マウスの幼若期における社会的敗北ストレス負荷による高次脳機能と神経発達への影響」と題して発表を行いました。発表後の質疑とコメントでは、社会的敗北ストレスモデルマウスの作製方法やAstn2の機能について質問をいただき、自身の研究の本質について再考する貴重な機会となりました。

本会で得られた知見を今後の研究活動に活かせるよう、より一層の研鑽を積んでまいります。

(報告者:木村天音)

【口頭発表】
木村天音
「Astn2遺伝子変異マウスの幼若期における社会的敗北ストレス負荷による高次脳機能と神経発達への影響」

2024年3月20日

第144回日本薬理学会近畿部会(大阪)

「第144回日本薬理学会近畿部会」が、大阪医科薬科大学・薬学部(阿武山キャンパス)にて開催されました。午前中は「令和6年学術評議員会・通常総会」、「第17回江橋節郎賞授賞式・受賞講演」、午後からは「第39回学術奨励賞授賞式・受賞講演」がWebとの同時開催で行われました。

当室からは、野田幸裕が一般演題(口頭)中枢神経系(1)のセッションにおいて座長を務め、同セッションにて発表を行いました。190名を超える学部学生・大学院生や若手研究者がそれぞれの専門分野での新しい視点から、意欲的で対面ならではの熱気に満ちた発表と活発な議論が交わされていました。なお、本部会にはオンライン参加者(約170名)と合わせて、約360名が参加し、盛会のうちに終了しました。

日本薬理学会近畿部会は、薬理学会地方部会の中でも歴史と伝統ある最も身近な学会であります。第143回の名古屋-第144回の大阪-第145回の広島での対面での開催を経て、コロナ禍から脱出した実りある対面での学術集会の場となっていくと思います。

(報告者:野田幸裕)

【座長】
野田幸裕
「一般演題(口頭)中枢神経系(1)」
【口頭発表】
野田幸裕
「フェンシクリジン連続投与マウスの社会性および認知行動におけるニコチン性アセチルコリン受容体の役割」