活動報告

研究活動

基礎・臨床研究で得られた成果は、積極的に国内外の精神神経薬理学、神経科学および医療薬学関連の学会や研究会にて報告し、世界を見据えて広く社会に発信しています。また、招待講演やシンポジウムなどにおいても多数発表を行っています。

2023年12月15日

第97回日本薬理学会年会/第44回日本臨床薬理学会学術総会(神戸)

第97回日本薬理学会年会/第44回日本臨床薬理学会学術総会が、神戸(神戸国際会議場・神戸国際展示場)にて「いのちと科学を薬でむすぶ」をテーマに同時期開催されました。

当室からは、野田幸裕が一般演題(口頭) 中枢神経系(2)のセッションにおいて座長を務めました。1,700名を超える基礎・臨床薬理学研究者が一堂に会し、いずれのセッションでも活発な討論が行われました。日本薬理学会年会では、これら薬を取り巻く幅広い分野の研究者が一堂に会し、討論・意見交換し、さらに最新の研究に関する情報を提供することによって、融合領域を含む薬理学のさらなる発展に寄与することを目指しています。現在の研究テーマである脳炎症と精神疾患に関する分子生物学や臨床医学の最新の情報、また、日本臨床薬理学会主催の演題から、基礎と臨床の間のギャップを埋めるためのトランスレーショナル・リバーストランスレーショナルリサーチの現状について学ぶことができました。

(報告者:野田幸裕)

【座長】
野田幸裕(12月15日)
一般演題(口頭) 中枢神経系(2)

2023年12月6日

第16回日地域連携薬剤管理指導研究会(ONLINE)

「第16回地域連携薬剤管理指導研究会」が「精神科領域(せん妄、うつなどの薬物治療、薬薬連携について)」をテーマにオンライン開催されました。本研究会は地域連携薬剤管理指導研究会、愛知県薬剤師会、特定非営利活動法人 医薬品適正使用推進機構、およびMeiji Seika ファルマ株式会社の共催、愛知県薬剤師会および名古屋市薬剤師会の後援で行われました。

当室の野田幸裕教授が地域連携薬剤管理指導研究会の世話人代表として、開催の挨拶と講演①と②の座長を務められました。講演①では地方都市の単科精神科病院の地域医療連携、講演②では大学病院におけるせん妄対策、講演③では薬剤師が知っておくべきうつ・不安症の薬物療法と、地域連携や薬物選択方法についてわかりやすく解説され、大変興味深いものでした。普段の研究室生活では関わることのない、より専門的な臨床現場でご活躍される先生方のご講演を拝聴することは、自身の「耳学」へと繋がり大変刺激になりました。コロナ禍を経てオンライン開催が普及した現状を上手く活用しながら、多くの「耳学」を積極的に取り入れていきたいと思います。

(報告者:中村真理子)

【座長】
野田幸裕

2023年9月16~17日

第7回日本精神薬学会総会・学術集会(岡山)

「第7回日本精神薬学会総会・学術集会」が『薬と心と社会をつなぐ精神科薬物療法』をテーマに、岡山大学の創立五十周年記念館および一般教育棟にて開催されました。COVID-19の流行により過去3年間のWEB開催を経て、本会は「晴れの国 岡山」にて現地開催されました。全国より精神薬学を専門とする薬局・病院の臨床薬剤師や大学・企業の基礎研究者・教員・学生が一堂に集い、熱心な討論が交わされました。

当室からは、シンポジウム1「精神科薬物治療におけるポリファーマシーのマネージメント」において野田幸裕教授がオーガナイザー・座長を務め、野田幸裕教授は「精神科薬物療法におけるポリファーマシー:概要」として、日本の精神疾患に対する薬物療法が海外に比べてポリファーマシーの処方率が高いことを紹介しました。肥田裕丈研究員は「うつ病治療におけるポリファーマシーを整理する」と題して、抗うつ薬のポリファーマシー対策と適正使用について発表しました。各講演後には多数の質疑応答がありました。向精神薬の効能を正しく理解すること、ポリファーマシーでは治療効果と副作用を注意深く監視し、有益性を確保すること、向精神薬の減量は適切に行うことの重要性を共有しました。

吉見 陽はワークショップ1「PCP研究会企画 より良い薬物治療を考えよう―「症例検討」うつ病―」の演者を務めました。当日に追加の参加者があり、日本精神薬学会の鍋島俊隆顧問がファシリテーターを快く引き受けてくださり、6グループ(36名)にて『糖尿病治療中のうつ病』の治療について活発な議論が交わされました。薬局・病院で働く精神科薬剤師が、提示症例の問題点に対して治療指針(ガイドライン)やエビデンス(薬理学的・薬物動態学的特徴、忍容性・安全性プロファイルなど)に基づいた介入プランを立案しました。日常臨床で遭遇する症例の治療について、薬剤師の視点から他の職種(医師や看護師など)と協議する際に、どのような根拠に基づくものか再確認・整理しておくことにより、自信を持って意見を提案することができるようになると考えています。

2024年度は昭和大学上條記念館(東京)で「無限の可能性を求めて創る精神科薬薬連携〜さあ、Next Stageへ〜」をテーマに開催される予定です。今回は懇親会の開催が見送られましたが、次回は学術集会での活発な討論の後に懇親会でリラックスした雰囲気の中で歓談できることを楽しみにしています。

(報告者:吉見 陽)

【オーガナイザー・座長】
野田幸裕(9月16日)
シンポジウム1「精神科薬物治療におけるポリファーマシーのマネージメント」
【シンポジウム】
野田幸裕(9月16日)シンポジスト(シンポジウム1)
「精神科薬物療法におけるポリファーマシー:概要」
肥田裕丈(9月16日)シンポジスト(シンポジウム1)
「うつ病治療におけるポリファーマシーを整理する」
【ワークショップ】
吉見 陽(9月16日)演者(ワークショップ1)
「PCP研究会企画 より良い薬物治療を考えよう―「症例検討」うつ病―」

2023年7月20日

令和4年度助成研究発表会(東京)

2023年7月20日、京王プラザホテルにて、「令和4年度助成研究発表会」が開催されました。

ストレス関連疾患のひとつであるうつ病患者では、認知機能障害が認められます。この障害は、うつ病治療薬による抑うつ症状の寛解後も残存し、患者の社会復帰に影響を与えます。当室からは、野田幸裕が幼若期社会的敗北ストレスマウスを用いた社会性行動障害の発現機序に関する研究成果について発表いたしました。また、「喫煙と精神機能・行動 D-1」のセッションの座長も務めました。当室の研究成果の発表後には、社会性行動障害におけるニコチン受容体α7とα4β2サブユニットの役割の相違について質疑応答があり、熱心に聴き入る参加者の姿が見受けられました。幼少期でのストレス負荷後に認められる成長後の不安やうつ様症状は、成体期でのストレス負荷後に認められるうつ様症状とは臨床的に異なることを助言頂きました。実験の妥当性や信頼性、治療薬の作用機序や特性などを吟味し、今後の研究活動に繋げたいと思いました。

(報告者:野田幸裕)

【口頭発表】
野田幸裕「ストレスとレジリエンスを制御するニコチン関連分子・神経回路」

【座長】
野田幸裕「喫煙と精神機能・行動D-1」

2023年6月25日

第143回日本薬理学会近畿部会 市民公開講座(名古屋)

「第143回日本薬理学会近畿部会 市民公開講座」が、名城大学八事キャンパス ライフサイエンスホールにて、特定非営利活動法人医薬品適正使用推進機構(NPO J-DO)の後援を得て開催されました。

講師として加藤雅士教授(名城大学情報センター・農学部)をお招きし、「愛知の発酵食品の魅力:健康と美食と文化から考える」と題して、愛知県が誇る多様な発酵食品の魅力を健康と美食、文化の観点からご講演いただきました。講演には100名近い地域の方々が参加され、愛知県の特産品である味噌や酒、醤油、味醂、酢などの発酵食品についてのお話に熱心に聞き入っていました。特に、「薬学では敵とされる微生物も農学の分野ではなくてはならないものである」という言葉が印象に残り、微生物が日本の伝統文化の一つである和食と日本人の健康を陰から支えていることを知りました。

講演の前後には、加藤教授が手掛けた名城大学オリジナルブランド清酒である「華名城(はなのしろ)」の試飲会が行われ、参加者の方々は3種類の味の違いを楽しんでいました。薬剤師として薬だけでなく、食生活の面からも健康をサポートすることの重要性を改めて感じるきっかけとなりました。

(報告者:若原和生)

2023年6月24日

第143回日本薬理学会近畿部会(名古屋)

「第143回日本薬理学会近畿部会」が、ウインクあいち(愛知県産業労働センター)にて開催されました。

当室の野田幸裕教授が部会長、吉見 陽准教授が事務局長を務められた本部会では、東海地区の地域薬局や医療系企業の協賛、特定非営利活動法人医薬品適正使用推進機構(NPO J-DO)の後援を頂き、開催されました。近畿地区の薬理学研究者を中心に250名以上が参加し、計79題の演題が各セッションにて発表され、活発な討論が行われました。

当室からは学部6年の小野舞子、片田ひかり、川島菜月、黒田純輝、若原和生が学生口演にて発表を行いました。当室の学生が発表したいずれの演題も多くの薬理学研究者の方々からご質問やコメントがあり、大変盛況でした。統合失調症様モデルマウスの血漿におけるクロザピン反応性タンパク質の同定に関する若原の発表では、クロザピンによる免疫機能障害の発生機序や無顆粒球症患者における罹患しやすい感染症に関する質疑をいただき、クロザピンの副作用発現に関わる研究の重要性を改めて感じました。口演終了後には情報交換会も開催され、100名以上が参加し、歓談も交えながら研究成果について積極的に意見交換を行うことで、新たな知見を得る機会となりました。本学会に参加したことで、病態や薬物の作用機序を解明するためには、多角的な視点から検討していくことが重要であることを学び、今後の研究課題も見つけることができました。本学会で学んだことを研究活動に活かし、さらに努力していきたいと思います。

なお、本部会において、川島菜月および片田ひかりが第143回日本薬理学会近畿部会優秀発表賞を受賞しました。

(報告者:若原和生)

【口頭発表】
小野舞子
「レット症候群モデル神経細胞表現型スクリーニングから見出された候補化合物の連続投与マウスの行動学的特徴」
片田ひかり
「幼若期社会的敗北ストレス負荷による社会性行動障害発現におけるミクログリアとTNF-αの関与」
川島菜月
「幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスの社会性行動障害におけるニコチン関連化合物の影響」
黒田純輝
「Astn2 遺伝子変異と新生仔期免疫活性化の複合曝露による高次脳機能への影響」
若原和生
「統合失調症様モデルマウスの血漿におけるクロザピン反応性タンパク質の同定」

2023年5月26日~28日

第16回日本緩和医療薬学会年会:The 16th Annual Meeting of Japanese Society for Pharmaceutical Palliative Care and Sciences(神戸)

「第16回日本緩和医療薬学会年会」が『持続可能な発展に向けた緩和医療薬学の未来予想図を描く』をテーマに、神戸の神戸国際会議場および神戸商工会議所会館にて開催されました。緩和医療は、がん疾患だけではなく生命を脅かすあらゆる疾患に苦悩する患者や家族の生活の質の向上を目指すものです。本学会は、『日本において益々高まる緩和医療の重要性を鑑み、保険薬局薬剤師、病院薬剤師、薬学研究者の連携強化を図り、緩和医療における薬物療法の推進と充実、さらに大学での教育研究と企業での開発・学術研究の進捗発展を目的とする』学術団体です。2007年の設立から15年で会員数は4000名規模となり、本邦の緩和医療を牽引する組織の一つとなっています。本会は4年ぶりの全面的な対面開催で、どこの会場も立ち見で、会場に入室できないほどの参加者でした。

当室からは、野田幸裕教授がシンポジウム14「がん患者のトータルペインに迫る精神科的アプローチ」、博士課程4年の中村真理子が一般演題(口頭)にて発表を行いました。拝聴した山口重樹先生(獨協医科大学 麻酔科学講座)の教育講演1「緩和薬物治療の現在標準と将来展望:適切な痛みの薬物療法を再考する」では、慢性疼痛は薬物治療が慢性化しやすいように思われがちですが、『慢性薬物治療』ではないこと、慢性疼痛におけるアドヒアランス不良は単に飲み忘れではなく、疼痛症状の改善による場合が多いため、『アドヒアランス』を適切に考える必要があることを認識した講演でした。緩和医療領域への学会参加は今回が初めてでしたが、緩和医療の根本的な考え方から社会環境まで、幅広く知見を深める機会となりました。野田教授のご発表にもあったように、まずは向精神薬を通して緩和医療の臨床現場へも足を踏み入れられるよう精進します。

(報告者:中村真理子)

【シンポジウム】
野田幸裕(5月28日)
「がん医療における向精神薬の適正使用」
【一般演題(口頭)】
中村真理子(5月27日)
「がん疼痛治療におけるオキシコドンの薬物動態学的多様性に基づく効果的な疼痛管理」

2023年5月7日~10日

第34回国際神経精神薬理学会:34th CINP World Congress Neuropsychopharmacology(CINP 2023)(モントリオール)

「34th CINP World Congress Neuropsychopharmacology(CINP 2023)」が最新の研究の発展や新しい治療法、新しい臨床ニーズや問題点について学び、世界中の研究者とコミュニケーション・協力・ネットワークを築くことをテーマに、カナダ モンテリオールのFairmont The Queen Elizabethにて開催されました。COVID-19の影響で本会は3年間のバーチャル開催を経て、今回ようやく対面開催が実現し、大盛会でした。

当室からは、野田幸裕教授と博士課程4年の中村真理子が一般演題(ポスター)にて発表を行いました。国際学会に対面で参加するのは初めてであり、国際学会の華やかさや世界中の研究者と直接討論できることに感銘し、何ものにも代え難い経験となりました。拝聴した講演発表と議論を通し、精神疾患の病態の解明やその治療薬の開発の目的は患者の社会復帰であり、これは世界共通であると実感しました。

なお、本会において中村真理子はCINP 34th Congress Student Encouragement AwardおよびJSNP Excellent Presentation Award for CINP 2023を受賞しました。この受賞は、今後の研究の活力になり、世界共通語である英語のスキル向上に益々精進していきたいと思います。

(報告者:中村真理子)

【一般演題(ポスター)】
Yukihiro Noda(5月9日)
「Dual Role of Nicotine in Therapeutic and Addictive Effect in Schizophrenia: A Convergent Approach Based on Clinical and Basic Researches」
Mariko Nakamura(5月8日)
「Potential of Serotonin Transporter as a Biomarker in Chronic Orofacial Pain with Depressive Symptoms Before and After Duloxetine-treatment」

2023年3月25日~28日

日本薬学会第143年会(札幌)

「日本薬学会第143年会(札幌)」が『ファーマサイエンス:つながる・つきぬける』をテーマに北海道大学札幌キャンパスを主会場とした現地とWEBでのハイブリッド形式で開催されました。本年会は物理系、化学系、生物系、医療系、臨床系などの多様な学術領域の研究者が一堂に会し、研究成果を発表し議論することで、革新的な医薬品・治療法の創出へ繋げることを目的としています。本年会は実に4年ぶりの現地開催であり、8000名を超える参加者のもと、盛会のうちに終了しました。

当室からは野田幸裕教授、博士課程3年の中村真理子先輩、学部5年の加納正暉が一般演題(ポスター)にて発表を行いました。いずれの発表でも発表時間の終了まで多数の質問を受け、大変盛況でした。今回初めて学会に参加し、臨床薬剤師・研究者それぞれの視点から研究成果の解釈や臨床への還元方法など、多くのご意見をいただくことができました。特に、患者の認知機能に応じ、患者本人だけでなくご家族に対しても吸入指導を行う必要性や患者の治療への不安や意欲がコロナ禍における気管支喘息症状のコントロールに与える影響について、意見交換を行うこともできました。また、領域融合シンポジウム「神経障害性の痛みにおける新しい慢性化メカニズム」では、神経障害性疼痛に対し、中枢における免疫担当細胞が寛解や再発において密接に関与している可能性があるなど新たな知見を得ることができました。

本学会で得られた知見を今後の研究活動や薬剤師外来での吸入指導へ活かせるように努めたいと思います。

(報告者:加納正暉)

【一般ポスター発表】
野田幸裕(3月27日)
「2021年薬学共用試験OSCEの結果解析報告と2022年度OSCE結果の速報」
中村真理子(3月26日)
「クロザピン服用患者におけるCYP2D6遺伝子多型とクロザピンおよびその代謝物の血中濃度や臨床効果・副作用発現との関連性」
加納正暉(3月27日)
「コロナ禍における気管支喘息患者の吸入療法の現状:地域薬局でのアンケート調査」