活動報告

研究活動

基礎・臨床研究で得られた成果は、積極的に国内外の精神神経薬理学、神経科学および医療薬学関連の学会や研究会にて報告し、世界を見据えて広く社会に発信しています。また、招待講演やシンポジウムなどにおいても多数発表を行っています。

2026年3月16~18日

第99回日本薬理学会年会(宮城)

「第99回日本薬理学会年会」が「薬理学白寿―先進性と深化の追求―」をテーマに東北大学川内キャンパスにて開催されました。本会は薬物の効果・副作用の評価のみならず、疾患の成因解明や治療法的の発見など新たな治療法の創出に貢献することを目的として開催されております。

 当室からは博士課程2年の加納正暉が一般演題(ポスター)にて「Role of α7 nicotinic ACh receptor signaling in social behaviors in mice exposed to social defeat stress as juveniles」と題して発表を行いました。発表では大学・企業を問わず多くの先生方から多数の質問をいただきました。社会的敗北ストレスの負荷方法やα7ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬とニコチンとの作用面での相違点など、実験方法から薬物治療の機序まで活発な議論を交わすことができました。

シンポジウムでは、社会的敗北ストレスにより社会性行動障害の発現のみならず排便回数の増加といった過敏性腸症候群様症状が発現し、社会的敗北ストレスによる中枢神経系以外への影響について知ることができました。この症状は、雌雄によって異なることから、性差で異なる神経系が関与している可能性があると学びました。

今回得られた知見は、今後の研究活動に活かし、益々精進していきたいと思います。

(報告者:加納正暉)

【一般演題(ポスター)】
加納正暉(3月17日)
「Role of α7 nicotinic ACh receptor signaling in social behaviors in mice exposed to social defeat stress as juveniles」

2026年3月15日(日)

第35回神経行動薬理若手研究者の集い(宮城)

「第35回神経行動薬理若手研究者の集い」が「飛べ」をテーマとして、東北医科薬科大学・小松島キャンパスにて開催されました。本会は若手研究者の育成を目的に、神経行動薬理学を志す若手研究者が一堂に会し、自由闊達な議論と交流を通じて各々の専門性を磨くための議論の場として提供されています。

当室からは博士課程2年の加納正暉が一般演題にて「幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスにおける社会性行動にα7ニコチン性アセチルコリン受容体シグナル伝達が及ぼす影響」と題して口頭発表を行いました。発表後には幼若期と成体期では社会的敗北ストレスに対する抗うつ薬の反応性の違いについてなどの質問があり、活発に議論が行われました。

AIを駆使した行動学的解析についての発表では、マウスのひっかき行動の回数や痛みを知覚した際の表情をAIが解析することで観測者のバイアスを抑え、客観的でより詳細に行動解析が可能になると学びました。

本会を通して既存の実験手法にAIなどの最新の技術を応用することで、客観的な解析が困難であった行動も解析可能となり、行動薬理学の更なる深化についての知見を広めることができました。本会で得た学びを今後の自身の研究活動に活かしていきたいと思います。

(報告者:加納正暉)

【一般口頭演題】
加納正暉(3月15日)
「幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスにおける社会性行動にα7ニコチン性アセチルコリン受容体シグナル伝達が及ぼす影響」

2026年1月22日

日本社会薬学会東海支部・第27回講演会(名古屋)

「日本社会薬学会東海支部・第27回講演会」が名城大学八事キャンパス薬学部にて開催されました。薬学生を対象として、名城大学名誉教授 飯田耕太郎先生が座長を務め、「知っておきたい認知症の基本:病態生理から治療・地域連携~自分らしく前向きに生きるために~」と題して、野田幸裕が講演しました。認知症の病態生理と薬物療法について歴史的背景から最新の知見に至るまでの解説と、本学部の地域における認知症患者との取り組みについて紹介しました。現在日本で承認されている認知症治療薬は、新薬のドナネマブやレカネマブを含めると6種です。これらの薬は、認知症の症状進行を緩やかにする効能がありますが、完全に止めることはできません。認知症患者の社会参加は症状の軽減をもたらすばかりでなく、認知機能の維持を目指すことが可能です。その一環として多くの地域で認知症カフェが開催され、本学部の学生が地域ボランティア活動として参加しています。薬学生がその重要性を認識して、地域医療に貢献できるようになればと思います。
(報告者:野田幸裕)

【招待講演】
野田幸裕(1月22日)招待演者
「知っておきたい認知症の基本:病態生理から治療・地域連携~自分らしく前向きに生きるために~」

2025年12月16日

藤田医科大学 精神・神経病態解明センター ICBSセミナー(豊明)

藤田医科大学精神・神経病態解明センター(International Center for Brain Science : ICBS)では、ゲノム解析学、細胞生物学、神経生理学、神経化学、行動薬理学、ヒトイメージングおよび計算科学の7部門が協同して精神・神経疾患の病態解明、未知である脳・こころの基本的原理の理解、新規治療法および新規技術の開発を目指しています。

当室の野田幸裕が、「精神障害の発症脆弱性における環境要因の関与:幼若期社会的敗北ストレスモデル動物を用いたアプローチ Involvement of environmental factors in vulnerability of psychiatric disorders: approach using social defeat stress model animals as juveniles」と題してICBSセミナーにて発表しました。幼少期における心理社会的ストレスによる抑うつ症状に対して既存の抗うつ薬治療の有効性や安全性が乏しいという問題があります。そこで、いじめや虐待などの心理社会的ストレスを負荷したモデルマウスを作製し、グルタミン酸神経系が治療抵抗性のうつ症状に関与していることから、グルタミン酸神経系に注目して、情動行動障害の発現機序、その病態解明や新規治療戦略に繋げた研究について紹介しました。発表後には、行動障害と単回ストレスや連続ストレス負荷におけるグルタミン酸神経系との相互の関係、脳内炎症との関連性について質疑があり、今後の研究の課題が明確になりました。

(報告者:野田幸裕)

【招待講演】
野田幸裕
「精神障害の発症脆弱性における環境要因の関与:幼若期社会的敗北ストレスモデル動物を用いたアプローチ Involvement of environmental factors in vulnerability of psychiatric disorders: approach using social defeat stress model animals as juveniles」

2025年11月22日~24日

第35回 日本医療薬学会年会(神戸)

「第35回 日本医療薬学会年会」が、「医療薬学の深化と広がり-患者アウトカムの改善を目指して-」をテーマに、神戸国際展示場、神戸国際会議場、および神戸ポートピアホテルにおいて現地とWEBとのハイブリッド形式で開催されました。患者アウトカムの改善を目指して、深化と広がりがみられる医療薬学について討論する機会として、種々のプログラムが組み込まれていました。医療に従事する薬剤師、薬学研究者、薬学教育者あるいは薬学生以外に、医薬品、医療・薬科機器、医療情報等に関わる多くの関係者が参画し、活発な討論・議論が行われ、盛会裏に終了しました。

当室からは野田幸裕が一般演題(ポスター)にて発表を行いました。発表では多くの臨床薬剤師からご質問をいただき、特に、オレキシン受容体拮抗薬が4種類になったことから、これらの使用状況と使い分け、長期使用での新たな問題点や睡眠衛生の普及などについて意見交換を行うことができました。薬剤師は、外来不眠症患者における睡眠状況や睡眠導入薬の処方実態を理解し、睡眠導入薬や睡眠衛生に関する患者の理解度を把握することで、効果的かつ安全な薬物治療を支援する必要があることが再認識できました。今回の意見交換で得られた内容を今後の研究・臨床活動に活かしたいと思います。

(報告者:野田幸裕)

【一般演題(ポスター)】
野田幸裕(11月24日)
「睡眠導入薬服用外来患者における睡眠とその使用の状況に関する調査」

2025年11月13日~15日

第47回日本生物学的精神医学会、第35回日本臨床精神神経薬理学会、第55回日本神経精神薬理学会の各学術大会の合同年会(BPCNPNP2025合同年会)(京都)

第47回日本生物学的精神医学会、第35回日本臨床精神神経薬理学会、第55回日本神経精神薬理学会の各学術大会の合同年会(BPCNPNP2025合同年会)が国立京都国際会館(京都市左京区)にて開催されました。本合同大会のテーマは「精神疾患の世界を変える ~野望を持って理想を目指せ!」であり、それぞれの学会が精神疾患に伴う課題解決を目指し、精神疾患克服に向けて、その病態解明から薬物治療に至るまでの研究内容が多数ありました。
当室からは、学部6年の永井拓巳がポスター発表を行いました。発表時間には、全国各地の参加者から多数の質問をいただき、新たな視点の発見につながる貴重な経験の場となりました。行動異常と脳での免疫・炎症反応の関連をミクログリアだけでなく、アストロサイトやその他周囲の細胞ではどのような変化が見られるのか、今後の研究課題について今回の交流で認識することができました。
本会を通して、精神薬学・医学の専門領域の奥深さを医師・薬剤師・企業の方との交流から経験することができました。

報告者:永井拓巳

【一般演題(ポスター)】
永井拓巳(11月13日)
「ASTN2遺伝子変異マウスの幼若期における社会的敗北ストレス負荷による高次脳機能と神経発達への影響」

2025年9月13~14日

第9回日本精神薬学会総会・学術集会(東京)

「第9回 日本精神薬学会総会・学術総会」が北里大学白金キャンパスにて「虹色に輝く未来に心に届く薬を届けよう」をテーマに開催されました。全国各地の精神薬学を専門とする薬局・病院の臨床薬剤師や大学・企業の基礎研究者、教員、および学生が多数参加し、各セッションにおいて活発な討論が行われました。
当室からは野田幸裕教授が「シンポジウム1:クロザピンの副作用、みんなどうしてる?-ラボとベッドサイド、両方から考える副作用対策-」のシンポジストとして「クロザピンによる血液毒性の発現機序を考える:基礎研究からのアプローチ」と題して発表し、「ワークショップ2:抗精神病薬の減薬・減量の実践的なワークショップ」の企画運営も務められました。一般演題において、𠮷見 陽准教授、学部6年の尾崎真優、金澤和桜子がポスターを行いました。発表時間には参加者からストレス負荷マウスの行動変容および細胞内情報伝達系の変化、これらの変化に対する薬剤の影響について数多くの質問がありました。他の発表に対してはモデルマウスを用いた基礎研究から得られた知見をどのように臨床現場へ還元するかなど、様々な分野で活躍されている先生方との大変貴重な交流の場となりました。また、今後の展望を交えて議論を交わすことで自身の研究について改めて省察することができました。
本会を通して、精神科領域の薬物治療における様々な課題や薬剤師の役割について理解を深め、薬物治療の適正化を図るために基礎研究と臨床の両方の面で研鑽していくことが重要であると再認識しました。
なお、本会において、尾崎真優および金澤和桜子が2025年度日本精神薬学賞を受賞しました。

(報告者:尾崎真優、金澤和桜子)

【シンポジウム】
野田幸裕(9月13日)シンポジスト(シンポジウム1)
「シンポジウム1:クロザピンの副作用、みんなどうしてる?-ラボとベッドサイド、両方から考える副作用対策-」
「クロザピンによる血液毒性の発現機序を考える:基礎研究からのアプローチ」

【ワークショップ】
野田幸裕(9月13日)企画/運営
「ワークショップ2:抗精神病薬の減薬・減量の実践的なワークショップ」

【一般演題(ポスター)】
𠮷見 陽(9月13日)
「統合失調症患者の薬物療法に関する処方実態調査(2024年)その1 ~全国51施設の入院患者の処方状況について~」
尾崎真優(9月13日)
「幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスの社会性行動障害におけるα7ニコチン性アセチルコリン受容体を介する細胞内情報伝達系の関与」
金澤和桜子(9月13日)
「フェンシクリジン誘発統合失調症様モデルマウスにおける脳内クロザピン反応性遺伝子の探索的研究」

2025年8月19日~22日

ISN-ASN 2025 – New York:The International Society of Neurochemistry (ISN) and the American Society of Neurochemistry (ASN) (ニューヨーク)

ISN-ASN 2025 – New York:The International Society of Neurochemistry (ISN) and the American Society of Neurochemistry (ASN) がニューヨークのNorth Javits Centerで現地開催されました。ISN-ASN 2025は、世界最先端の神経化学の情報が集まる大変充実したプログラムでした。
開会式のオープニングセレモニーに続き、Magdalena Götz先生による「神経発生、疾患、修復における細胞小器官の多様性」に関する特別講演があり、終日、活発な議論が行われ、熱気にあふれていました。17時からのポスターセッションでは、当室の博士課程修了生の伊藤貴博くんが博士課程時の研究論文に対して「Journal of Neurochemistry: 2023 Young Investigator Paper of the Year in Honor of Mark A. Smith – 2nd Place Winner」に選出された論文内容のポスター発表に参加しました。2日目はストレスに関連する記憶や精神疾患に関する分子・細胞機序についてシンポジウムを聴講しました。17時30分から「Involvement of α7 Nicotinic Acetylcholine Receptor in Social Behavior Impairments in Juvenile Mice Exposed to Social Defeat Stress」の演題にてポスター発表を行いました。α7 Nicotinic Acetylcholine Receptorを欠損させた影響、脳炎症がどのように惹起されるのかなど、コメントと質問があり、海外の研究者と研究について交流を図りました。3日目にはEric Nestler 先生の「Transcriptional and Epigenetic Mechanisms of Drug Addiction」、4日目には Eunjoon Kim先生の「Synaptic Dysfunction in Autism Spectrum Disorders」と題した素晴らしい講演で1日が始まり、多くの研究者が聴衆していました。
今回の会議では神経化学の発展にとどまらず、科学そのものに繋がり、神経化学の限界に挑戦する若手研究者の革新と献身的な取り組みなどが紹介された会議であました。最後に次回の会議「Neurochemistry 2027」は、京都で開催することが案内されました。(報告者:野田幸裕)

【Journal of Neurochemistry: 2023 Young Investigator Paper of the Year in Honor of Mark A. Smith – 2nd Place Winner】
Takahiro Ito(8月19日)「Astrotactin2 (ASTN2) regulates emotional and cognitive functions by affecting neuronal morphogenesis and monoaminergic systems」
【一般演題:ポスター】
Yukihiro Noda(8月20日)「Involvement of α7 nicotinic acetylcholine receptor in social behavior impairments in juvenile mice exposed to social defeat stress」

2025年7月18日

令和6年度助成研究発表会(東京)

京王プラザホテルにて、「令和6年度助成研究発表会」が開催されました。
幼少期における心理社会的ストレスによる抑うつ症状に対して抗うつ薬治療の有効性や安全性が乏しいという問題があります。幼若期に社会的敗北ストレスを負荷したマウスにおける社会性行動障害は、既存の抗うつ薬では改善されず、治療抵抗性を示します。脳内ニコチン性アセチルコリン受容体α7サブユニット(α7nAChR)が精神機能の調節や神経炎症に関与していることから、本報告では、治療抵抗性ストレス関連行動に対するα7nAChR関連化合物の急性作用とその分子機序に関する研究成果を当室の野田幸裕が報告しました。また、「喫煙と精神機能・行動 E-2」のセッションの座長も務めました。
研究成果の報告後には、行動障害におけるα7以外のα4やβ2サブユニットの関与や連続投与の影響、行動障害と脳内炎症やα7nAChRの関連性について質疑応答がありました。今後は、モデルマウスの病態と神経炎症の関連性やα7nAChRを介する分子機序を検討し、α7nAChR関連化合物の新規治療薬としての可能性に繋げたいと思いました。
(報告者:野田幸裕)

【口頭発表】
野田幸裕「幼若期ストレスによる脳内炎症におけるニコチン関連分子・神経回路の関与:創薬への可能性」

【座長】
野田幸裕「喫煙と精神機能・行動E-2」

2025年7月5日

第71回日本薬学会東海支部総会・大会(名古屋)

「第71回日本薬学会東海支部総会・大会」が名城大学薬学部にて開催されました。本会では、東海地区を中心とする薬学系研究者が150名以上参加し、化学系薬学、生物系薬学、物理系薬学、医療系薬学等のいずれのセッションでも活発に討論されていました。
当室からは学部6年の楠本美優が一般演題(口頭発表)「Astn2 遺伝子変異マウスの新生仔期における免疫活性化による高次脳機能への影響」と題して発表を行いました。発表後の質疑では、ヒトにおける周産期の感染症罹患と精神疾患発症の関連について質問をいただき、自身の研究と臨床との繋がりをより意識する貴重な機会となりました。
本会で医療への応用を踏まえた研究の重要性を学びました。今回得られた知見を、今後の研究活動に活かせるよう、さらに努力していきたいと思います。
なお、本会におきまして、楠本美優は学生優秀発表賞を受賞しました。

(報告者:楠本美優)

【口頭発表】
楠本美優
「Astn2 遺伝子変異マウスの新生仔期における免疫活性化による高次脳機能への影響」

2025年6月28日〜29日

医療薬学フォーラム2025/第33回クリニカルファーマシーシンポジウム(旭川)

「医療薬学フォーラム2025/第33回クリニカルファーマシーシンポジウム」が、大雪クリスタルホールと旭川地場産業振興センターにて「時を越える医療薬科学」をテーマに開催されました。

当室からは𠮷見 陽がシンポジウム4「精神科領域における薬学研究の最前線」にて「精神科領域におけるリバーストランスレーショナルリサーチ」について発表しました。総合討論では、「精神疾患患者を対象とした網羅的解析においては、症状や生物学的背景による層別化が必要であるが、研究規模・資金・解析手法などにより限界がある。網羅的解析後のデータ階層化や複数のサンプルセットによる検証など、特定集団を区別できる分子を探索するには工夫が求められる」という意見がありました。また、「将来の精神薬学分野に関心を持つ薬剤師養成のためには、薬学部在学中に臨床現場での精神科薬剤師の業務や症例課題、患者の声、バーチャル症状体験などを通じて、精神科医療を学ぶ機会の提供が必要である」ことなどの発言がありました。このように、研究のみならず臨床・教育の視点からシンポジストや参加者と活発な意見交換を行うことができました。

(報告者:𠮷見 陽)

【シンポジウム】
𠮷見 陽(6月28日)シンポジスト(シンポジウム4)
「精神科領域におけるリバーストランスレーショナルリサーチ」

2025年6月21日

第4回日本精神薬学会・Webワークショップ(オンライン)

「第4回日本精神薬学会・Webワークショップ」が、オンラインにて「処方検討ワークショップ―統合失調症―」をテーマに開催されました。
当室からは𠮷見 陽が講師を担当し、大学院博士課程4年生の堀田彰悟がファシリテーターを務めました。再燃・再発を繰り返す急性期統合失調症患者の病態を把握し、適切なエビデンスに基づいてより良い薬物治療は何かを考え、治療方針を提案できるようになることを目的として、参加者36名が6グループに分かれてディスカッションを行いました。事前課題として患者背景の整理と薬剤調整計画を立案してきたこともあり、情報量が多く活発な議論が展開されました。症例の抱える問題点を解決するために、ガイドラインや臨床試験に基づく検討に加え、患者・家族の病識・薬識や服薬管理の問題などを加味した様々な療養計画が発表されました。質疑応答を含めて、治療方針を提案するための薬学的思考プロセスを共有することにより、精神科薬物療法の最適化について様々な視点から考察する良い機会となりました。
(報告者:𠮷見 陽)

【講師】
𠮷見 陽「処方検討ワークショップ―統合失調症―」
【ファシリテーター】
堀田彰悟

2025年3月26日~29日

日本薬学会第145年会(福岡)

「日本薬学会第145年会」が、「薬学エコシステムの推進:異分野連携で拓く未来のイノベーション」をテーマに、福岡国際会議場、マリンメッセ福岡B館、福岡サンパレスで開催されました。本年会では、異なる部会、学会、国、業種、研究手法、世代などの様々な垣根を超え、お互いの情報を交換し、お互いをよく理解し、お互いの繋がりを強く・深くすることで、従来の垣根を超えたさらなる異分野連携を推進することを目的としています。8,000名を超える参加者があり、活発な討論・議論が行われ、盛会裏に終了しました。

当室からは野田幸裕教授、学部5年の井指孝一が一般演題(ポスター)にて発表を行いました。いずれの発表でも発表時間の終了まで多数の質問を受け、大変盛況でした。井指は今回初めて学会に参加し、精神科病棟に勤務する薬剤師や保険薬局の薬剤師から研究成果の解釈や今後の展望について多くのご意見をいただくことができました。特に、将来の医療従事者となる薬学生に対する教育プログラム(例: 認知行動療法の技法を取り入れたロールプレイなど)の具体案について、意見交換を行うことができました。一方で、他研究室の同期との交流も新たな刺激となり、お互い励まし合う機会となりました。

一般口頭発表(医療系)の「薬物治療学⑤(臨床)」では、新たな知見としてクロザピン服用による流涎の量と頻度には、服用量、期間や精神症状との関連性よりも、服用方法が強く関連していることが報告されました。特に「夜間のみに服用」することで流涎が有意に減少し、症状が緩和される傾向があることが示されました。実際に発表を聞く中で、臨床研究におけるClinical QuestionやPICOの設定、対象選定、主要評価項目の明確化、統計手法の選択など、研究デザインの具体的なイメージを膨らませる機会となりました。

本年会で得られた知見を今後の研究・臨床活動に活かし、より一層精進したいと思います。

(報告者:井指孝一)


【一般演題(ポスター)】

野田幸裕(3月28日)「2023年度薬学共用試験OSCEの解析結果と2024年度OSCEの結果速報、および薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)に対応したOSCEへの取組」

井指孝一(3月28日)「薬学生、薬剤師や精神疾患患者における精神疾患に対するスティグマに関する調査」

2025年3月17日(月)~19日(水)

APPW2025(第130回日本解剖学会/第102回日本生理学会/第98回日本薬理学会合同大会)(千葉)

「APPW2025(第130回日本解剖学会/第102回日本生理学会/第98回日本薬理学会合同大会)」が「協奏の未来へ~生命を探る・解く・護る~」をテーマとして、幕張メッセにて開催されました。本合同大会は生命を構造・機能面から探り、新たな治療法を開拓することを目的に、基礎医学領域の発展の場として提供されていります。

当室からは博士課程1年の加納正暉が一般演題(ポスター)およびshort talkにて「The mutant of Pcdh15, a gene associated with bipolar disorders (BD) induces BD-like behavioral and synaptic transmission abnormalities in mice」と題して発表を行いました。英語でのshort talkは初めてであり、とても貴重な経験となりました。ポスターでは多くの研究者から質問を頂き、モデルマウスの妥当性や病態生理について活発に議論を行うことができました。

シンポジウム:「ストレス研究の新潮流:ストレス応答と病態形成メカニズムの解明へ」では統合失調症やうつ病などの精神疾患には脳内のサイトカイン濃度の変化の他に、脂質異常が関与する可能性があるという新たな知見を得ることができました。

なお本会におきまして加納正暉はGraduate Student Presentation Awardを受賞しました。この受賞は、今後の研究の活力となり、益々研究活動に精進していきたいと思います。

(報告者:加納正暉)

【一般演題(ポスター)・short talk】
「The mutant of Pcdh15, a gene associated with bipolar disorders (BD) induces BD-like behavioral and synaptic transmission abnormalities in mice」

2025年3月16日

第34回神経行動薬理若手研究者の集い

「第34回神経行動薬理若手研究者の集い」が「ひらく」をテーマとして、お茶の水女子大学にて開催されました。本会は若手研究者の育成を目的に、基礎生物学研究と行動薬理研究を融合させることにより高次生命現象やそのシステム破綻による疾患発症を理解し、各神経精神疾患の治療薬開発に貢献するための議論の場として提供されています。

当室からは博士課程1年の加納正暉が一般演題にて「双極症関連遺伝子であるPcdh15遺伝子変異がマウスの精神行動やシナプス伝達に与える影響」と題して口頭発表を行いました。発表後には脳内モノアミンやアミノ酸変化と行動変容との関連性など、多数の質問を頂くことができました。

シンポジウムでは「モデルマウスを用いたタウ蛋白代謝におけるオートファジーの役割の解明」について拝聴しました。オートファジーはリン酸化タンパク質の分解に関与しており、オートファジーの阻害がアルツハイマー病の病因であるリン酸化タウタンパク質を増加することからアルツハイマー病の発症に関与する可能性を学ぶことができました。

本会を通して神経・精神疾患の機序の解明には行動薬理学を含め、種々の実験手法を融合することでより詳細な検討を行うことができ、融合研究の重要性について学ぶことができました。本会で得た多角的な視点を今後の研究活動に活かし、より努力していきたいと思います。

(報告者:加納正暉)

【一般口頭演題】
加納正暉(3月16日)
「双極症関連遺伝子であるPcdh15遺伝子変異がマウスの精神行動やシナプス伝達に与える影響」

2024年11月2日~4日

第34回 日本医療薬学会年会(千葉)

「第34回 日本医療薬学会年会」が、「未来の医療をデザインする薬学・薬剤師の視点」をテーマに、幕張メッセおよびTKP東京ベイ幕張ホールを主会場とした現地開催とWEB開催を併用したハイブリッド形式で開催されました。本年会は医薬品開発に必要なデータ解析や臨床研究、医薬品の適正使用を推進する取り組みから、薬剤師の質を担保する教育研修までの幅広い領域の薬学・薬剤師の視点をもった研究者が一同に会し、活発な討論・議論が行われ、盛会裏に終了しました。

当室からは野田幸裕教授がシンポジウム46「向精神病薬と自動車運転-エビデンスの社会実装と適切な薬剤指導-」においてオーガナイザー・座長/趣旨説明を務められました。向精神病薬添付文書では、副作用が少ない標準的治療薬でも運転禁止が規定されていますが、精神疾患の社会復帰や就労を考える際に、運転業務を必須とする場合は少なくありません。向精神病薬がどの程度、自動車運転に影響を与えるかは、客観的に明確にされていませんが、運転シミュレーターを用いて運転の横揺れの程度を測定することで、向精神病薬の服用により自動車運転に及ぼす影響を評価する方法を学びました。向精神病薬の服用による自動車運転への影響を科学的に理解し、適切な服薬指導を行うことで有効・安全な向精神病薬の服用に繋げられるよう学んでいきたいと思います。

博士課程1年の加納正暉先輩および学部6年の加藤朱莉が一般演題(ポスター)にて発表を行いました。いずれの発表でも多くの臨床薬剤師や研究者からご質問をいただき、臨床への還元方法や各病院の問題点などの意見交換を行うことができました。シンポジウム3「医療薬学×臨床検査医学 臨床検査のアップデートによる薬物治療の革新」では、治療抵抗性統合失調症に用いるクロザピンの血中濃度測定において、クロザピン濃度の個人差、コストおよび検査にかかる時間など実臨床での現実的な問題点を知りました。薬剤師が血中濃度測定の必要性を理解し、体制構築へ働きかけることがクロザピンの服用に重要であると実感しました。

本年会で得られた知見を今後の研究・臨床活動に活かし、より一層精進したいと思います。

(報告者:加藤朱莉)

【オーガナイザー・座長/趣旨説明】
野田幸裕(11月3日)
シンポジウム46「向精神病薬と自動車運転-エビデンスの社会実装と適切な薬剤指導-」
【一般演題(ポスター)】
加納正暉(11月3日)
「地域薬局におけるコロナ禍での気管支喘息患者における吸入指導の現状:感染症拡大状況での適切な吸入指導に向けて」
加藤朱莉(11月3日)
「統合失調症入院患者の有効かつ安全な減薬・減量の確立に向けて:名古屋大学医学部附属病院における処方の実態調査」

2024年9月21日~22日

第8回日本精神薬学会総会・学術集会(東京)

「第8回 日本精神薬学会総会・学術集会」が、昭和大学上條記念会館にて「無限の可能性を求めて創る精神科薬薬連携~さぁ、Next Stageへ~」をテーマに開催されました。全国より精神薬学を専門とする薬局・病院の臨床薬剤師や大学・企業の基礎研究者・教員・学生が493名参加し、熱心な討論が交わされました。

当室からは学部6年の加藤朱莉、加藤拓真がポスター発表を行いました。いずれの発表でも発表時間の終了まで多数の参加者から質問をいただき、大変好評でした。今回初めて精神薬学を専門とする学会に参加し、臨床薬剤師・研究者それぞれの視点から細胞を用いた研究やモデルマウスを用いた研究の妥当性や解釈、今後の臨床への還元方法など、多くのご意見を頂くことが出来ました。学部2年生の薬学生には結果の説明だけではなく、行動学的・神経化学的検討で得られた結果の捉え方や、どのような疾患のモデルマウスを使用し、どのように薬剤を選択したのかなど、基本的な内容についても丁寧に解説をしました。本会に参加したことで、精神疾患に対する薬学的介入について様々な研究発表や講演を聴講し、知識を深め、自己研鑽することの重要性を改めて学びました。

なお、本会において、加藤朱莉および加藤拓真が日本精神薬学賞を受賞しました。

 

2025年度は北里大学白金キャンパス(東京)で「虹色に輝く未来に 心に届く薬を届けよう」をテーマに開催される予定です。

(報告者:加藤拓真)

【ポスター発表】
加藤朱莉(9月21日)
「HL-60細胞でのクロザピンによる血液毒性に対するリチウムの作用」
加藤拓真(9月21日)
「プロトカドヘリン15(Pcdh15)遺伝子変異マウスにおける高次脳機能と脳内アミノ酸神経の変容」

2024年9月15~16日

The 9th Nagoya / Gifu / Nanjing / Shenyang Symposium of Pharmaceutical Sciences(名古屋)

「The 9th Nagoya / Gifu / Nanjing / Shenyang Symposium of Pharmaceutical Sciences」が、名古屋市立大学大学院薬学研究科 田辺通キャンパスにて開催されました。本薬学学術シンポジウムは、名城大学が学術協定を結ぶ中国薬科大学および瀋陽薬科大学との学術交流を目的として開催されました。2日間で、基礎から臨床研究まで多岐にわたる口頭発表33演題、ポスター発表74演題があり、演題ごとに活発な討論が行われました。

当室からは野田幸裕教授が名城大学実行委員として、座長を務められました。当室より𠮷見 陽准教授、研究員の中村真理子先生、博士課程1年の加納正暉先輩、学部6年の加藤朱莉、深見彩乃、雄谷拓海、川合竣也、五十住優弥、森川和那、木村天音および加藤拓真の計11名がポスター発表を行いました。いずれの発表においても、発表終了後まで実験方法や結果の質疑ならびに研究の考察について意見交換があり、大変貴重な交流をすることが出来ました。

中国薬系大学の口頭発表では、非アルコール性脂肪肝炎モデルマウスを用いた薬剤の有効性を検討した発表を拝聴しました。モデルマウスを作製して病態生理や治療薬の有効性を検討するという当室の研究と共通した研究発表であり、興味深く拝聴することができました。国際的な視野を持った研究の必要性を再認識するきっかけとなりました。日中間の幅広い薬学系分野の研究発表を聴講することで、当室とは違う研究分野・デザインについて触れ、視野も広げることができ大変有意義な機会となりました。

(報告者:雄谷拓海)

【座長】
野田幸裕(9月15日)
「Oral session 8」
【ポスター発表】
𠮷見 陽(9月15日)
「Spatial brain proteomic analysis using a schizophrenia-like model mouse treated with clozapine」
中村真理子(9月15日)
「Involvement of serotonin transporter in chronic orofacial pain with depressive symptoms before and after duloxetine treatment」
加納正暉(9月15日)
「Inhalation therapy for patients with bronchial asthma during the COVID-19 pandemic: appropriate instructions amidst infectious disease spread」
深見彩乃(9月15日)
「Involvement of adrenaline beta2 receptors in clozapine-induced lipid droplet accumulation in 3T3-L1 cells」
五十住優弥(9月15日)
「Involvement of TNF-α/TNFR1 signaling in microglia and glutamatergic neurotransmission of mice exposed to social defeat stress as juveniles」
加藤朱莉(9月15日)
「Effect of lithium on hematopoietic toxicity induced by clozapine in HL-60 cells」
加藤拓真(9月15日)
「Mice with deficiency in Pcdh15, a gene associated with bipolar disorders (BD), exhibit BD-like behaviors and monoaminergic properties」
川合竣也(9月15日)
「Effect of clozapine on cognitive behaviors function and neurotransmitters in a schizophrenia-like mouse model」
木村天音(9月15日)
「Influence of environment adversity during neurodevelopment on future behavioral responses and neuromorphogenesis in astrotactin2 (ASTN2) heterozygous mice」
森川和那(9月15日)
「Involvement of nicotinic acetylcholine receptor α7 subunit in the impairment of social behaviors in mice exposed to social defeat stress as juveniles.」
雄谷拓海(9月15日)
「Comprehensive gene expression analysis of lymphoblastoid cell lines from schizophrenia patients and blood and brain samples from a schizophrenia-like mouse model.」

2024年8月17日~18日

第9回日本薬学教育学会大会

「第9回日本薬学教育学会大会」が、東京薬科大学にて「薬学教育におけるプロフェッショナリズムとは?」をテーマに開催されました。薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)では、従来の「薬剤師としての心構え」と「患者・生活者本位の視点」が「プロフェッショナリズム」として発展されました。医療プロフェッショナリズムでは何をどう教えるか、大学や医療現場からその取り組みがシンポジウムや一般演題にて多く報告されていました。1日目は、大型で猛烈な台風7号の影響で、前日の首都圏をはじめ各地で鉄道の運休、新幹線各線の計画運休などにより、オンラインでの発表もありましたが、薬学教育に関わる参加者との交流や、薬学教育・研究についての討議を行う貴重な情報交換の機会でありました。

当室からは、シンポジウム8「これからの多職種連携教育の学修プログラムと課題を共に考える」にて、野田幸裕が「医療系学部を有さない薬学部における多職種連携教育:他施設との共同による段階的なプログラム」について発表しました。各専門職からの発表後には、情報共有・交換として総合討論が行われました。多職種が連携するチーム医療教育の課題が再確認され、学部教育だけでなく、医療現場での教育連携・協力体制やプラットフォームの構築が必要であると思いました。

(報告者:野田幸裕)

【シンポジウム】
シンポジウム8:これからの多職種連携教育の学修プログラムと課題を共に考える
野田幸裕(8月18日)シンポジスト
「医療系学部を有さない薬学部における多職種連携教育:他施設との共同による段階的なプログラム」

2024年7月6日~7日

医療薬学フォーラム2024/第32回クリニカルファーマシーシンポジウム(熊本)

「医療薬学フォーラム2024/第32回クリニカルファーマシーシンポジウム」が、熊本市民会館シア
ーズホーム夢ホール/熊本市国際交流会館にて開催されました。医薬品開発や臨床業務を含む
医療において、人工知能(AI)やデジタル化(DX)などの導入により、医療環境は大きく変化してい
ます。日本の医療薬科学の歴史と伝統のある本フォーラムでは、『継続と変革の融合 ~新たな絆
で築く、地域社会に貢献する医療薬学~』をテーマに、医療薬科学・薬剤師の継続と変革につい
て議論を交わし、情報交換できた大会でした。
当室からは、野田幸裕がシンポジウム8『薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)
に対応した薬学共用試験OSCEのあり方』のオーガナイザー・座長を務め、同セッションにて発表
を行いました。多数の各専門分野の研究者や薬剤師、学部学生・大学院生がそれぞれの新しい
視点から、意欲的で対面ならではの熱気に満ちた発表と活発な議論が交わされていました。すっ
かり、コロナ禍から脱出した実りある対面での学術集会の場でした。

(報告者:野田幸裕)

【オーガナイザー・座長】
野田幸裕
シンポジウム8「薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)に対応した薬学共用試
験OSCEのあり方」』
野田幸裕
「OverView:新しいコアカリに対応した薬学共用試験 OSCE」