活動報告

研究活動

基礎・臨床研究で得られた成果は、積極的に国内外の精神神経薬理学、神経科学および医療薬学関連の学会や研究会にて報告し、世界を見据えて広く社会に発信しています。また、招待講演やシンポジウムなどにおいても多数発表を行っています。

2021年2月12日

第44回 岐阜県精神科病院協会 薬剤師会研修会

「第44回 岐阜県精神科病院協会 薬剤師会研修会」がライブ配信にて開催されました。本研修会は、チーム医療のなかで精神領域における薬剤師の役割を考える、県内外の精神科専門薬剤師、精神科薬物療法認定薬剤師の業務ならびに実情を知り学ぶ、薬剤師の日常業務から臨床研究へと繋がる発想を学ぶことを目的に行われました。

当室からは野田幸裕が、特別講演「統合失調症の薬物治療:社会復帰に向けて」と題して、統合失調症の病態やその仮説、治療目標と治療の現状・課題について講演を行いました。また、実験動物を用いた基礎的な生命科学研究において得られた成果や薬効評価の結果が臨床へ繋がるトランスレーショナル非臨床研究の重要性について紹介しました。講演後には、治療薬の剤型変更を患者やその家族に説明するコツなどに関する質問がありました。患者に「薬を飲ませる」のではなく、「薬を安心して飲める」ようにするための薬物療法に役立ててもらえればと思います。Web開催ではありましたが、多数の薬剤師の先生方が視聴されていました。

(報告者:野田幸裕)

【特別講演】
野田幸裕(2月12日)
「統合失調症の薬物治療:社会復帰に向けて」

2020年11日12日

南房総臨床薬学オンラインセミナー

昨今、新型コロナウイルス感染症の影響で多くの講演会が中止もしくは延期となっていますが、「南房総臨床薬学セミナー」は双方向性のオンライン講演として開催されました。本セミナーは、千葉県病院薬剤師会の薬剤師や薬学部の先生方が対象となっています。

当室の野田幸裕が「医療連携の果たす役割〜薬剤師の観点から:薬剤師外来 (喘息 ・COPD 吸入療法外来)を通した医療連携」と題して、気管支喘息やCOPDの患者への吸入指導について講演を行いました。座長の舟越亮寛先生(亀田総合病院薬剤部部長)や参加した先生方と吸入指導の連携の在り方や難しさ、地域医療連携について意見交換をすることができました。今後、県の垣根を超えた吸入指導に関する最新の情報を交換しながら、地域連携システムを構築していきたいと思いました。(報告者:野田幸裕)

【招待講演】
野田幸裕
「医療連携の果たす役割〜薬剤師の観点から:薬剤師外来 (喘息 ・COPD 吸入療法外来)を通した医療連携」

2020年11日8日

ロナセンテープSpeaker’s Meeting 2020

「ロナセンテープSpeaker’s Meeting 2020」は、新型コロナウイルス感染症のリスクを最小化するため、Webシステムを介した双方向通信の形式で開催されました。

本会のSession 1では、ロナセンテープの基礎的・臨床的な情報をより深く理解してもらうために、3名の先生方から講演(①急性期統合失調症に対するロナセンテープの治療学的位置付け:系統的レビューの結果より、②ロナセンテープ国内第3相長期投与試験、③統合失調症治療におけるロナセンテープの可能性)がありました。Session 2では、ロナセンテープを適切に使用するために、「統合失調症の薬物治療における薬剤師の役割:新たな投与経路“経皮吸収型抗精神病薬”を使いこなす」をテーマとして、20名の薬剤師の先生方と相互ディスカッションが行われました。

当室からは野田幸裕が、Session 2ディスカッションのファシリテーターを務めました。「ロナセンテープが統合失調症治療にもたらした変化」「ロナセンテープの処方提案、治療導入、服薬指導におけるコツ」について、対象となる症例、副作用への対策等の意見交換と情報共有を行いました。本剤の有効性を最大限に発揮するためには薬剤師の担う役割が重要であり、今後も最新の知見、スキルについて集積し、共有することが必要であると思いました。(報告者:野田幸裕)

【ファシリテーター】
野田幸裕
Session 2ディスカッション:「統合失調症の薬物治療における薬剤師の役割:新たな投与経路“経皮吸収型抗精神病薬”を使いこなす」

2020年10月3日および18日

The New Approach to Schizophrenia from TokyoおよびThe New Approach to Schizophrenia from Osaka

「The New Approach to Schizophrenia from Tokyo」と「The New Approach to Schizophrenia from Osaka」が開催され、それぞれ東京と大阪からLIVE発信されました。

2019年9月10日に世界初の経皮吸収型抗精神病薬として、ブロナンセリンのテープ剤が本邦で使用可能となりました。本会では、ブロナンセリンの薬理学的特徴を振り返るとともに、発売から1年で得られたテープ剤としての最新の知見やその有用性について、統合失調症のエキスパートによる講演とパネルディスカッションにて議論されました。

当室からは野田幸裕が、Session1「Dopamine Serotonin Antagonist(DSA)の可能性 -ブロナンセリンの軌跡:非臨床試験のフルレビュー-」と題して講演を行いました。ブロナンセリンの開発の軌跡から、今日までに報告されている非臨床試験での有効性についてフルレビューし、今後の臨床における統合失調症をはじめとする精神疾患や精神症状に対するDSAの可能性について概説しました。講演後には、錐体外路系副作用とドパミンD3受容体、統合失調症のドパミン仮説とブロナンセリンに関する質問がありました。非臨床試験から臨床での貼付剤としてのブロナンセリンの理解を深め、今後の新しい薬物治療に役立つ内容でした。Web開催ではありましたが、いずれのLIVE発信においても1,000名以上の先生方が視聴されていました。

(報告者:野田幸裕)

【Session1:招待講演】
野田幸裕(10月3日および18日)
「Dopamine Serotonin Antagonist(DSA)の可能性 -ブロナンセリンの軌跡:非臨床試験のフルレビュー-」

2020年9月20日~9月22日(WEB開催での会期:10月24日~11月1日)

第30回日本医療薬学会年会

「第30回日本医療薬学会年会」が、名古屋国際会議場ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋にて「患者と医療を支える薬剤師力を磨く」をテーマに開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を懸念して変更となりました。

超高齢社会において疾病構造が大きく変化する一方で、医学薬学の進歩に伴い、先端医療が次々と日常診療の中に組み込まれ、治療法は多様化・高度化しています。年会は、これらの変化に対応するため薬剤師力を「診療」「教育」「研究」「社会貢献」の4つの観点から議論し、令和の時代に求められる薬剤師力について理解を深めることを目的としています。

当室からは、野田幸裕教授がシンポジウム43薬学教育における薬学共用試験OSCEの現状と今後の課題においてオーガナイザー座長、シンポジウム56「統合失調症の社会復帰に向けた薬物療法の構築のために」においてオーガナイザー・座長に加えシンポジスト務められましたシンポジウム56では吉見 陽助教もシンポジストとして発表しました。

一般演題では野田幸裕教授、博士課程1年の中村真理子先輩、学部6年の長谷川真由ポスター発表を行いました。吸入操作の再指導を必要とする患者の要因の探索についての発表では、再指導までの期間薬剤師外来と薬局における吸入指導方法統一に向けた取り組みについて質問を頂き、薬薬連携を通じ吸入療法支援について再考する良い機会となりました。

本大会を通して、大学の講義では知り得ない発展した臨床疑問やそれに対する薬剤師のマネジメントについて、多方面から学ぶことができました。この経験を糧とし、より一層勉学に励み、患者と医療を支える専門性を持った薬剤師を目指していきたいです。

(報告者:長谷川真由)

 

【オーガナイザー・座長】
野田幸裕
シンポジウム43:「薬学教育における薬学共用試験OSCEの現状と今後の課題」
シンポジウム56:「統合失調症の社会復帰に向けた薬物療法の構築のために」

【シンポジウム56】
野田幸裕
「統合失調症の社会復帰に向けた薬物療法の概要」
吉見 陽
「統合失調症の病態解明と診断技術開発」

【一般演題(ポスター)】
野田幸裕
「名古屋大学医学部附属病院精神科外来患者における抗うつ薬や抗不安薬の処方状況に関する調査」
中村真理子
「地域コミュニティ啓発活動としてのくすりの適正使用に関する『くすり教室』の有用性」
長谷川真由
「吸入操作の再指導を必要とする患者の要因の探索」

2020年9月12日~13日

第5回日本薬学教育学会大会

「第5回日本薬学教育学会大会」が、帝京大学板橋キャンパスにて「未来を変える薬学教育の力 -医療の絆が新たなチャレンジを実現する-」をテーマに開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の流行状況から、Web上で開催されることとなりました。薬学教育に関わる参加者との交流や、薬学教育・研究についての討議を行う貴重な情報交換の機会であったため、非常に残念でした。一方で、薬学教育や薬剤師の生涯教育においてもWeb上での情報発信、情報共有やICT教育の重要性が高まっている中、Webオンライン教育の在り方を考える良い機会となりました。

当室からは野田幸裕が一般講演のe-ポスター発表を行いました。2019年度の薬学共用試験OSCEの結果概要、新型コロナウイルス感染症拡大に伴って2020年度に限り従来の6課題を3課題にした経緯、OSCE実施時の感染対策について紹介しました。

また、野田幸裕はシンポジウム11の医療系教育学会連携シンポジウム「共有し拡げよう!チーム医療教育の連携の輪」のオーガナイザー・座長を務めました。同時に「薬学教育の立場から」として、薬学教育における多職種連携教育(IPE)について概説しました。各教育学会(日本看護学教育学会、日本歯科医学教育学会、日本医学教育学会、日本保健医療福祉連携教育学会)の先生方からの発表後には、情報共有・交換として総合討論が行われました。多職種が連携するチーム医療教育のモデルの提示、カリキュラム作成の支援には、医療系の教育学会が横断的に討議し、協力する体制やプラットフォームの構築が望まれます。そのためには、将来の医療系共通のチーム医療教育カリキュラム作成などの教育学会の横の連携・協働していく必要があると思いました。

(報告者:野田幸裕)

【一般講演:(e-ポスター):臨床準備教育】
野田幸裕(9月12日~13日)
「2019年薬学共用試験OSCEの結果解析と2020年OSCE実施に向けた感染対策」

【オーガナイザー・座長】
野田幸裕(9月13日)
シンポジウム11:医療系教育学会連携シンポジウム「共有し拡げよう!チーム医療教育の連携の輪」
【シンポジウム11】
野田幸裕(9月13日)
「共有し拡げよう!チーム医療教育の連携の輪 -薬学教育の立場から-」

2020年8月21日~23日

第50回日本神経精神薬理学会年会/第42回日本生物学的精神医学会年会/第4回日本精神薬学会総会・学術集会 合同年会(仙台)

「第50回日本神経精神薬理学会年会/第42回日本生物学的精神医学会年会/第4回日本精神薬学会総会・学術集会 合同年会」が仙台国際センターにて「レジリエントな心をつくるDeveloping Resilient Mind」をテーマに3学会合同で開催される予定でした。しかし、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響のため、現地開催でなく、Web開催となりました。本合同年会は、「脳と心の科学の探求と薬学への応用」という3学会の共通目標に向かって協力しながら、精神疾患の病態解明と新たな治療薬の開発を目指すこと、脳と心のメカニズムとそれに対する治療薬に関する研究・臨床・教育の最前線に臨むこと、2011年に起きた東日本大震災からの復興、さらには臨床と基礎の協働という、様々な意味における「連携」への期待が込められています。

本合同年会において、野田幸裕教授がシンポジウム14のオーガナイザー・座長とシンポジスト、および第1回抗精神病薬に関する減薬・減量のオンラインワークショップの企画/運営を務められました。これまでは、抗精神病薬に関する減薬・減量のガイドラインを作成するため、減薬・減量の経験を有する薬剤師を対象としてワークショップを3回開催してきました。本合同年会ではWeb開催に合わせて少人数参加型の抗精神病薬に関する減薬・減量のオンラインワークショップとして開催されました。小さなグループに参加者を分けたグループワークでは、症例について減薬・減量の計画を立てるため、意見を出し合いながら討論が行われていました。一方、博士課程3年の内田美月、学部6年の佐治凪帆と吉田樹生がポスター発表を行いました。ポスター発表では閲覧した視聴者からコメントを頂き、後日フィードバックするため活発な討論とはなりませんでしたが、自身の研究を見つめ直す良い機会となりました。

新型コロナウイルス感染症により、研究活動が制限される中で開催された本合同年会では、最先端の研究成果を拝見・拝聴することで知識を深めることができ、今後の研究における糧となりました。新型コロナウイルス感染症の収束を願いながら、より一層研究に励みたいと思います。なお、本学会において、学部6年の佐治凪帆が2020年度日本精神薬学賞を、学部6年の吉田樹生が第4回日本精神薬学会総会・学術集会優秀発表賞を受賞しました。

(報告者:内田美月)

【ワークショップ】
野田幸裕(タスク/運営)、吉見 陽(タスク/運営)、内田美月(タイムキーパー)、中村真理子(タイムキーパー)、吉田樹生(補助)、佐治凪帆(補助)(8月23日)
「第1回抗精神病薬に関する減薬・減量のオンラインワークショップ」
【シンポジウム】
野田幸裕(8月21日~23日)オーガナイザー・座長/シンポジスト(シンポジウム14)
シンポジウム14(座長):「神経発達障害による精神疾患の発症・病態に関わる因子」
シンポジウム14(シンポジスト):「新生児期プロスタグランジンE2(PGE2)曝露による発達障害モデルマウスにおけるPGE2の役割」

【ポスター発表】
内田美月(8月21日~23日)
「ストレス負荷マウスにおける社会性行動障害に対するニコチンの単回と連続投与の作用」
佐治凪帆(8月21日~23日)
「病院実務実習における精神疾患に対する薬学生の意識調査」
吉田樹生(8月21日~23日)
「グルタミン酸作動性神経伝達および神経形態に対する幼若期社会的敗北ストレス負荷の影響」

2020年3月25~28日

日本薬学会第140年会(京都)

「日本薬学会第140年会」が、国立京都国際会館にて「『創』と『療』の伝承と革新 そして新たな時代の幕開け」をテーマに開催される予定でしたが、今般の新型コロナウイルス感染症が拡大の兆しのため、中止となりました。薬学の幅広い分野からの参加者との交流と、薬学の教育・研究についての討議を行う貴重な情報交換の機会でありましたが、非常に残念でした。

当室からは野田幸裕教授が一般演題の口頭発表の座長を拝命され、学部6年の中村真理子は一般演題のポスター発表として「口腔内慢性疼痛患者における血中ユビキチン化セロトニントランスポーターの発現変化」、および学部5年の長谷川真由は一般演題の口頭発表として「薬剤師外来において吸入操作の再確認に係る要因の探索:再確認基準の構築を目指して」と題して演題登録していました。

プログラム集の発行、Web要旨の公開をもって本年会は成立したものとされ、Web要旨は1年以上公開される予定となっています。これらから最新の薬学情報を収集し、今後の研究・臨床活動に活かしていきたいと思います。

(報告者:中村真理子)

【座長】
野田幸裕(3月27日)医療系薬学:薬物治療(基礎)

【一般学演題(ポスター)】
中村真理子(3月27日)
口腔内慢性疼痛患者における血中ユビキチン化セロトニントランスポーターの発現変化

【一般学演題(口頭)】
長谷川真由(3月28日)
薬剤師外来において吸入操作の再確認に係る要因の探索:再確認基準の構築を目指して

2020年3月16~18日

第93回日本薬理学会年会(横浜)

「第93回日本薬理学会年会」が、パシフィコ横浜にて「薬理学を一つの舞台に」をテーマに開催される予定でしたが、今般の新型コロナウイルス感染症が拡大の兆しのため、中止となりました。様々な学問領域の研究者同士の交流と、それに触発される発想の転換を得る機会でありましたが、非常に残念でした。

当室からは研究員の肥田裕丈先生が一般演題として「精神疾患の環境的要因におけるプロスタグランジンE2の役割」と題してポスター発表に演題登録していました。

年会のプログラム集はPDFとして公表され、J-StageのWEB出版として英文抄録がWEB上に掲載される予定となっています。これらの情報から新たな研究奨励に活かしていきたいと思います。

(報告者:野田幸裕)

【一般演題(ポスター)】
肥田裕丈(3月17日)
精神疾患の環境的要因におけるプロスタグランジンE2の役割

2019年11月10日

日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部 合同学術大会2019(名古屋)

「日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部 合同学術大会2019」が、名古屋市立大学大学院薬学研究科・薬学部(田辺キャンパス)にて「新時代の薬学・薬剤師像を考える」をテーマに開催されました。平成の時代には、6年制薬学教育が導入され大きな改革がありました。教育年限の延長と実務実習の充実から薬剤師へ求められる臨床能力は拡大した一方で、教育現場に求められる資質・負担は拡大しました。令和へと時代が移り変わり、この改革を臨床・教育現場に関わる薬剤師・教員が共同で再評価することで、新時代で活躍する薬学・薬剤師像を考えることができ、各会場で活発な討論が行われておりました。

当室からは、学部6年の武藤利奈が口頭発表を行いました。新生仔期マウスにおけるプロスタグランジンE2投与による成体期の高次機能に与える影響とその因子の探索についての発表では、新生仔期マウスへのプロスタグランジンE2の投与量の設定方法や、若年期と成体期での生化学的な変化の相違について質問を頂き、臨床的観点から研究を見つめ直す良い機会となりました。

特別公演では「精神・神経疾患の治療薬は脳内でどのように働いているか?」を拝聴しました。統合失調症やアルツハイマー型認知症を始めとした精神神経疾患の病態生理や治療薬の作用部位、作用機構は未だ十分に解明されておらず、新規治療薬の開発が困難になっています。本講演では、細胞内シグナルの網羅的・系統的解析を用いて、マウスの情動行動におけるドパミン神経細胞内のシグナル伝達を介した神経可塑性の調節機構、ドパミン神経系へのグルタミン酸やアセチルコリンの修飾作用など、大変興味深い最新の知見を得ることができました。本学会を通して、改めて基礎研究が疾患の病態解明や創薬にとって重要であることを実感することができました。本学会で学んだことを活かし基礎と臨床、両観点から適切な薬物療法を提案できる薬剤師になれるよう、より一層勉学に励みたいと思います。

(報告者:武藤利奈)

【一般講演:(口頭)生物系】
武藤利奈
「新生仔期マウスにおけるプロスタグランジンE2投与による成体期の高次機能に与える影響とその因子の探索」

2019年11月2~4日

第29回日本医療薬学会年会(福岡)

「第29回日本医療薬学会年会」が、福岡国際会議場・マリンメッセ福岡・福岡サンパレス・ホテル日航福岡にて、「新しい時代を担う医療薬学のこれから~薬学の英知の結集~」をメインテーマとして開催されました。

近年、次世代シークエンサーや分子標的薬の開発に伴うがんゲノム医療の推進、人工知能や情報通信技術を活用した業務支援システムの開発など、複雑化・高度化していく医療の中で薬剤師の役割が求められています。本年会では、新たな医療時代に適応し、最先端の医療や研究で活躍されている国内外の医療薬学関係者、1万人以上が一同に会し、最新の知見の紹介に加え、いかに新しい時代の医療薬学を担っていくのか活発にディスカッションが行われていました。

当室からは、野田幸裕が一般演題のポスターセッションにて発表を行いました。地域医療に関わる多くの薬剤師から、吸入薬の再確認の頻度や期間、薬局からのフィードバック方法などの質疑や地域薬局と情報連携に関するコメントなどについて意見交換を行い、大変盛況でした。こうした意見交換を通じて、当室の薬剤師外来と地域医療の在り方を見直す良い機会となりました。

なお、本学会において研究員の鳥居 綾先生が、2019年度 Postdoctoral Awardを受賞しました。この受賞は、学位論文などに基づき、医療薬学分野に関する学業活動に取り組んだ研究業績(医療薬学領域の研究など)について、今後の展開性や将来性が評価された結果です。

(報告者:野田幸裕)

【一般演題(ポスター)】
野田幸裕(11月3日)
「薬剤師外来における吸入療法支援の有用性と評価方法・連携ツールの作成」

【受賞講演】
後藤 綾(11月4日)
「抗精神病薬による血液毒性の発現機序に関する研究」

2019年10月23日

第1回つるまい薬薬薬連携研修会 ~吸入療法を中心に~(名古屋)

「第1回つるまい薬薬薬連携研修会」が名古屋大学医学部附属病院 鶴友会館にて開催されました。

講演1では名古屋大学医学部附属病院 呼吸器内科の若原恵子先生が「喘息治療Update/Q&A」と題して、講演2では当室の野田幸裕が「医療連携 薬剤師外来:吸入指導 Update」と題して、講演を行いました。本研修会には地域薬局の薬剤師の方を中心に、多数の参加がありました。各講演後には、薬局薬剤師の方から、日常の業務における吸入療法に関する疑問や名古屋大学医学部附属病院での薬剤師吸入外来の運用などについての質疑があり、活発な意見交換が行われました。本研修会では、医療連携の重要性が再確認でき、それを深める機会となりました。

今後の薬剤師外来(喘息・COPD吸入療法外来)の運用をより充実できるようにしていきたいと思います。

(報告者:野田幸裕)

【講演2】
野田幸裕
「医療連携 薬剤師外来:吸入指導 Update」

2019年10月11~13日

第6回アジア神経精神薬理学会(AsCNP2019)/第49回日本神経精神薬理学会年会(JSNP2019)/第29回日本臨床精神神経薬理学会年会(JSCNP2019)(福岡)

「第6回アジア神経精神薬理学会(AsCNP2019)/第49回日本神経精神薬理学会年会(JSNP2019)/第29回日本臨床精神神経薬理学会年会(JSCNP2019)」が福岡国際会議場・福岡サンパレスホテル&ホールにて3学会合同で開催されました。

本学会は、中枢神経障害の治療薬の効果の根底にあるメカニズムを解明し、神経精神薬理学においてアジアの次世代に発展させることを目的に開催されました。日本を含むアジアの研究者1750人以上が一同に会し、最新の知見の紹介に加え活発なディスカッションが行われていました。

当室からは、野田幸裕教授がAsCNPシンポジウムのシンポジストとして、吉見 陽助教、博士課程3年の伊藤貴博先輩、博士課程2年の内田美月先輩、および学部5年の吉田樹生がAsCNPポスターセッションにて発表を行いました。いずれの発表でも国内外の神経精神薬理学者から多数の質疑があり、大変盛況でした。

シンポジウムや特別講演、一般講演では、国内外の研究チームによる最先端の技術を駆使した研究内容や企業研究者の製品開発への道のりなど非常に興味深い発表を拝聴しました。国際交流やアカデミアと企業研究者の交流により神経精神疾患の病態解明や診断、治療法の確立、あるいは創薬のサイクルが加速することと思います。今回初めて国際学会に参加し、言葉の壁を感じましたが、多数の質疑やアドバイスから自分の研究内容を見直す良い機会となりました。今回得られた経験を忘れず、今後もより一層精進していきたいと思います。

なお、本学会において、野田幸裕教授がExcellent Presentation Award for AsCNP2019:Principle Investigatorを、吉見 陽助教、博士課程2年内田美月先輩がJSNP Excellent Presentation Award for AsCNPを受賞しました。

(報告者:吉田樹生)

【シンポジウム】
野田幸裕(10月12日)シンポジスト(シンポジウム21)
シンポジウム21:「Involvement of glial dysregulation of glutamatergic neurotransmission in development of behavioral abnormalities」

【一般演題(ポスター)】
吉見 陽(10月11日)
「Transcriptome analysis of major depressive patients and stress model mice showing depressive-like behaviors」
伊藤貴博(10月11日)
「Dysfunction of protein kinase C-beta 1 (PKCβ1) - serotonin transporter (SERT) systems is involved in depression-like behaviors in stressed mice」
内田美月(10月11日)
「Functional roles of glutamate transporter in neurodevelopmental processes」
吉田樹生(10月12日)
「Involvement of glutamate receptors in the impairment of social behaviors induced by social defeat stress exposure as juveniles」

2019年9月21~22日

第3回日本精神薬学会総会・学術集会(神戸)

「第3回日本精神薬学会総会・学術集会」が、神戸学院大学ポートアイランドキャンパスにて「多様化する精神科薬物療法~患者とともに考える~」をテーマに開催されました。本学会では、安全な精神科薬物治療を実践するためには、どのような情報共有やその連携システムが必要なのかを職種の枠を超えて考えることを目的としていました。2日間を通して、薬剤師や薬学生を中心に約460名が参加し、各セッションにおいて活発な討論が行われました。

本総会・学術集会において、野田幸裕教授がワークショップ2の企画運営や教育講演3の座長、鍋島学術奨励賞受賞者講演の司会を務められました。また、2018年度鍋島学術奨励賞受賞者として、吉見 陽助教が網羅的解析技術を用いた精神疾患関連因子の同定と診断技術開発について、研究員の肥田裕丈先生が精神疾患の環境要因に関わる発症脆弱因子の探索と意義の解明について講演を行いました。さらに、博士課程2年の内田美月先輩、学部6年の岩永周子が口頭発表を行いました。

ストレス負荷による社会性障害における海馬ニコチン性アセチルコリン受容体を介する細胞内情報伝達系異常の関与についての発表では、モデルマウスはどのような疾患を想定しているのか、行動障害の持続期間について質問を頂きました。3T3-L1細胞(脂肪細胞)でのクロザピンによる脂肪滴蓄積におけるアドレナリンβ受容体の関与についての発表では、今後検討予定の受容体や、クロザピンとアドレナリンβ受容体遮断薬の併用処置におけるレプチンmRNA発現量について質問を頂き、自分の研究を見つめ直し、今後の研究方針について改めて考えることができました。

理事長講演では、「精神科専門薬剤師の役割を再考する」を拝聴しました。精神科専門薬剤師・精神科薬物療法認定薬剤師が誕生して11年が経過しました。精神科領域の薬物治療において多剤併用大量処方が問題視されており、副作用の発現は患者のQOLを低下させ、社会復帰を妨げています。このような課題を打破するためには、高度な精神科薬物療法等について知識・技術を備えた精神科専門薬剤師の養成が必要であり、処方の最適化への関与が求められています。さらに薬物療法に関する研究・開発を行うと共に教育的な立場から、より多くの精神科薬剤師を指導することが良質な医療の提供に繋がります。日本の精神科医療に携わる薬剤師の現状や精神科専門薬剤師の役割について理解を深めることができました。

本総会・学術集会では、精神科薬剤師がチーム医療で患者の治療に携わることはもちろん、患者と共に治療を考え、患者のリカバリーに向けたサポートの重要性について知識を深めることができました。将来、臨床薬剤師として働く際に非常に参考となる有意義な会となりました。

なお、本総会・学術集会の口頭発表において、内田美月先輩、岩永周子が2019年度日本精神薬学賞を受賞しました。

(報告者:岩永周子)

【ワークショップ】
野田幸裕(9月21日)企画/運営
「ワークショップ2:第3回 向精神薬の減薬・減量ガイドライン構築のためのワークショップ」

【口頭発表】
内田美月(9月21日)
「ストレス負荷による社会性障害は海馬ニコチン性アセチルコリン受容体を介する細胞内情報伝達系異常が関与する」
岩永周子(9月22日)
「3T3-L1細胞(脂肪細胞)でのクロザピンによる脂肪滴蓄積におけるアドレナリンβ受容体の関与」

【教育講演】
野田幸裕(9月22日)座長
「教育講演3:気分障害-その診断と治療」

【鍋島学術奨励賞受賞者講演】
野田幸裕(9月22日)司会
吉見 陽(9月22日)講演者
「網羅的解析技術を用いた精神疾患関連因子の同定と診断技術開発」
肥田裕丈(9月22日)講演者
「精神疾患の環境要因に関わる発症脆弱因子の探索と意義の解明」

2019年7月25~28日

NEURO2019(第42回日本神経科学大会・第62回日本神経化学会大会 合同学会)(新潟)

「NEURO2019(第42回日本神経科学大会・第62回日本神経化学会大会 合同学会)」が、朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター(新潟市)にて「飛翔する脳科学:命と心の接点」というテーマを掲げ開催されました。今回は、日本神経科学学会と日本神経化学会の合同年会をNEURO2019と名付け、2013年の京都大会より数えて6年ぶりの合同開催となりました。昨今のヒト脳科学研究や基盤神経研究の著しい発展と、生物学、化学、医学、薬学に限らず、経済学、心理学、情報・システム工学、教育学を巻き込んだボーダーレス化、グローバル化の観点から大会プログラムが企画されました。その名の通り各セッションは、世界各国・各研究分野のエキスパートが独自のデータから脳機能を多角的に考察しており、シナプスにおける神経伝達に必要な最小構成タンパク質の同定、人工知能からヒト脳機能の考察、マウス社会のヒエラルキー構造を決定・破壊する神経回路の同定などセンセーショナルなものばかりでした。大会期間中はいずれも真夏日でしたが、それに負けないくらいの熱い議論が繰り広げられておりました。

当室からは、博士課程3年の伊藤貴博が一般演題のポスターセッションにて発表しました。神経精神疾患患者より横断的に欠損が認められ、その機能が良く知られていない分子を解析した当発表には、遺伝子学・行動学・神経化学などの様々な観点から多くの質問や意見をいただきました。ポスターに載せたデータを鋭い目線で見つめられた時は、緊張感が漂うものの、一度議論を始めてしまえば議論は尽きませんでした。

脳透明化、光遺伝学、AIなど、昨今の技術進歩により脳科学研究は新時代を迎え、加速する脳機能解明への道のりには、ワクワク感と楽しさがあり、挑戦しがいがあります。新知見に辿り着けるようになるためには、脳を「知る」ことだけに専念するのではなく、他者と「協同」すること、後進を「育成」することも大切だと学びました。「協同」には、研究者としての実績と信頼が、「育成」には根気や熱意、思いやりが必要です。残り限られた当室での活動を無駄にせず愉しめるように、今大会で得た学びを忘れずに精進していきます。

(報告者:伊藤貴博)

【一般演題:ポスターセッション】
伊藤貴博(7月25日)
「アストロタクチン2(ASTN2)はセロトニンおよびドーパミン作動性神経系に影響を及ぼすことで情動および認知機能を調節する」

2019年7月23日

第34回 平成30年度助成研究発表会(東京)

「平成30年度助成研究発表会」が、京王プラザホテルにて開催されました。

精神疾患と喫煙には非常に密接な関係がありますが、喫煙から摂取するニコチンは末梢および中枢に存在するニコチン性アセチルコリン受容体を介して様々な作用を示すことから、精神神経機能に与える作用機序の解明が多数行われています。当室からは、野田幸裕教授が「喫煙と精神機能・行動」のセッションにて平成30年度の研究成果を発表し、同セッションの座長も務められました。発表後には、ニコチン連続投与による依存形成への影響について質問を頂きました。

今回の研究発表会は研究助成の最終年度の報告であり、これまでの研究成果をまとめると同時に、今後の検討課題を見つめなおすことができました。引き続きニコチンによる治療効果の機序を解明し、ニコチン関連分子に注目した新規治療薬の開発を目指したいと思います。

(報告者:内田美月)

【喫煙と精神機能・行動】
野田幸裕 口頭発表(演題番号167)
「気分障害の神経精神機能におけるニコチン関連分子の探索-基礎と臨床研究からのアプローチ-」
野田幸裕 座長(演題番号160~163)

2019年7月18~19日

革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト<革新脳>後期キックオフミーティング(神奈川)

「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト<革新脳>後期キックオフミーティング」が、ホテルおかだ(箱根湯本)にて開催されました。

革新脳プロジェクトは、霊長類(マーモセット)の高次脳機能を担う神経回路の全容をニューロンレベルで解明することにより、ヒトの精神・神経疾患の克服や情報処理技術の高度化に貢献することを目的に、全国の様々な研究拠点の協力により実施されます。2014年度から10年間の計画として開始され、今回のミーティングは後期5年間の採択課題と新規採択課題の情報共有・研鑽として活発な議論が飛び交っておりました。

研究成果を発表する学会とは異なり、長期的な研究指針を示した各研究課題には、世界最先端の技術や革新的なアイデアが詰め込まれており、各研究機関の情熱が伝わってきました。ヒト疾患研究課題の研究開発分担者として野田幸裕教授が参画されていることから、当室の伊藤貴博がポスター発表をしました。研究者の先生方から、臨床で得られたヒト遺伝子変異を起点としたモデル動物の妥当性、タンパク質の機能面を考慮した今後の実験指針など様々なご意見やアドバイスをいただくことができ、研究方針を見直す良いきっかけとなりました。

脳機能は、約1000億個もの神経細胞がネットワークを構築することで成立しております。したがって、脳組織一部の変異に焦点をあてるだけでなく、変異の起点、他組織と相互作用など、脳機能の全容解明にはシステミックな考察力が求められることを学びました。

(報告者:伊藤貴博)

【ポスター発表:ヒト疾患研究課題】
伊藤貴博(7月18日)
「マウスの情動・認知機能におけるシナプス形成を制御するastrotactin(ASTN)2の役割」

2019年7月6日

第65回日本薬学会東海支部総会・大会(名古屋)

「第65回日本薬学会東海支部総会・大会」が名城大学八事キャンパス薬学部にて開催されました。

当室からは学部6年のいまみゆきと角田千佳、学部5年の太田絵梨花が一般講演にて口頭発表を行いました。発達期におけるグルタミン酸トランスポーターの機能障害が脳形成と神経精神機能に及ぼす影響に関する発表では、発達過程におけるグルタミン酸トランスポーターの発現変化、神経形態の変化に対するグルタミン酸トランスポーターの役割についてなど、貴重な質問や意見を頂くことが出来ました。統合失調症様モデルマウスにおけるクロザピン反応性タンパク質の同定に関する発表では、モデルマウスの妥当性や他の抗精神病薬に対するPSD-95の反応性についてなどの質問がありました。神経障害性疼痛が惹起するうつ様行動におけるセロトニントランスポーターの関与に関する発表では、神経障害性疼痛に臨床使用されているセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の投与の影響や今後の治療戦略についての質問があり、新たな視点から研究内容を見つめることで私見を深めることができました。

特別講演では、「どのように研究を進めるのか:君の夢をかなえる為に」を拝聴し、自分の研究分野だけに留まらず積極的に異分野交流・異分野研究に接することで、研究の考え方や、発表・議論の方法に影響を与えことを学びました。「素人発想、玄人実行」は自分の夢を叶えるために重要であると思いました。

今回初めて学会発表することで、薬学に関する幅広い分野の発表も聴くことができ、見聞を広めることができました。この経験を糧に、より一層勉学に励み、今後の研究活動に生かしていければと思います。(報告者:太田絵梨花、角田千佳、いまみゆき)

【一般講演:(口頭)生物系薬学4】
太田絵梨花
「発達期におけるグルタミン酸トランスポーターの機能障害が脳形成と神経精神機能に及ぼす影響」
角田千佳
「統合失調症様モデルマウスにおけるクロザピン反応性タンパク質の同定」
いまみゆき
「神経障害性疼痛が惹起するうつ様行動におけるセロトニントランスポーターの関与」

【座長:一般講演(口頭)生物系薬学5】
野田幸裕

2019年6月21~22日

第24回日本緩和医療学会学術大会(横浜)

「第24回日本緩和医療学会学術大会」が、パシフィコ横浜にて「緩和ケアのArt & Science」をテーマに開催されました。本大会の目的は、ホスピスケアやターミナルケアで発展してきた患者のQOLを尊重する考え方を終末期に限らずがん患者の全経過へ適用していくこと、医学の進歩に即応する専門性を持った緩和医療・緩和ケアを確立し、発展させることです。本大会では、緩和医療や緩和ケアの多様なニーズに応えるために、学問としてScienceの発展とそれを医療者に提供する際のArtについて各専門職が討論する場として開催されました。

当室からは野田幸裕教授が「フォーラム2:せん妄の薬学的管理の実際」のシンポジストとして「せん妄の薬学的管理:緩和薬物療法における向精神薬の適正使用」と題して発表しました。総合討論では、低活動型せん妄の対応や、鎮静とせん妄でのベンゾジアゼピン系薬の使い分けについて質問がありました。低活動型せん妄は見過ごされやすく予後も悪いため、不眠を見逃さず、睡眠薬を適正に使用することが重要であること、せん妄と鎮静に使用する薬物はガイドラインや手引きでも異なるので、使用目的を明確にする必要があることが議論されました。

緩和医療でのせん妄の治療や予防は、病院だけでなく、在宅医療においても喫緊の解題であり、病院と在宅が連携し、在宅緩和ケアにおけるせん妄の発症・重症化を予防する必要があります。そのためにも、せん妄治療に使用される向精神薬の薬理学的特性を理解しながら、適正使用に関与していきたいと思います。

(報告者:野田幸裕)

【シンポジウム】
野田幸裕(6月22日)シンポジスト(フォーラム2)
フォーラム2:せん妄の薬学的管理の実際
せん妄の薬学的管理:緩和薬物療法における向精神薬の適正使用

2019年5月31日~6月2日

第13回日本緩和医療薬学会年会(千葉)

「第13回日本緩和医療薬学会年会」が、幕張メッセにて「鎮痛の正義を科学して臨床に活かす-次世代型包括的緩和医療のための緩和医療学、疼痛制御学、腫瘍免疫学、神経精神薬理学の境界統合的理解-」をメインテーマに開催されました。緩和医療を終身医療と位置付けた最新医療と最先端の臨床・基礎研究を融合させたプログラムが多数組まれており、緩和医療と他の医療分野の専門家間での活発な討論が行われていました。

当室からは野田幸裕教授が「シンポジウム5:緩和医療と集中治療における鎮静とせん妄治療 ~PCTとICUでの実臨床~」のシンポジストとして「鎮静薬とせん妄治療薬の作用機序: 緩和医療での適正使用に向けて」と題して発表しました。総合討論では、薬理学的な視点や薬剤の選択基準、保険適応、安全性などについて多くの質問がありました。ミダゾラムを増量しても鎮静が不十分な場合や苦痛緩和が困難な場合にどう対応するかなど、ガイドラインや手引きから逸脱する対応も必要であることが議論されました。

緩和医療と集中治療の領域では対象患者は異なりますが、耐え難い苦痛やせん妄に対する鎮静や治療は両領域において実施されています。両領域で向精神薬である鎮静薬やせん妄治療薬が適切に使用されるように関与していきたいと思います。

(報告者:野田幸裕)

【シンポジウム】
野田幸裕(6月1日)シンポジスト(シンポジウム5)
シンポジウム5:緩和医療と集中治療における鎮静とせん妄治療 ~PCTとICUでの実臨床~
「鎮静薬とせん妄治療薬の作用機序: 緩和医療での適正使用に向けて」