活動報告
活動報告の紹介
- 研究活動
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基礎・臨床研究で得られた成果は、積極的に国内外の精神神経薬理学、神経科学および医療薬学関連の学会や研究会にて報告し、世界を見据えて広く社会に発信しています。また、招待講演やシンポジウムなどにおいても多数発表を行っています。
- 大学・研究室行事
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大学行事として、学生フォーラム、ソフトボール大会、オープンキャンパス、卒論発表や卒業式などが開催され、こうした行事には積極的に参加しています。研究室行事として、鶴舞公園での花見、ゼミ旅行、スポーツフェスティバル、新年会など、1年を通して楽しいイベントを開催し、メンバー同士の親睦を深めています。
- 国際交流活動
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名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センターは、学術交流協定を結んでいる米国をはじめとする海外の大学教員や臨床研修生を受け入れ、講義への参加、関連医療施設の見学、症例検討を通し、研究・教育の交流を行っています。 名古屋大学医学部附属病院での臨床研修は、名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センターサテライトセミナー室を拠点として、当部門のアドバンスト学生や配属学生が薬剤部と協力して実施しています。アドバンスト学生は病棟・薬剤師外来や関連医局での活動を中心に、臨床研修・症例や研究内容を英語で紹介します。また、日米の薬学教育や文化も紹介し、交流を深めています。
- 社会活動
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くすりを通じて社会を知ることで社会に貢献できる医療人の育成を目指して、地域での「くすり教室」や「研修」活動を積極的に実施・参加しています。中でも、特定非営利活動法人医薬品適正使用推進機構(NPO J-DO)は、国民にくすりを安全に安心して使っていただくために薬剤師や国民に対する教育講演や学会を開催しています。その活動の一つとして、小学生にもくすりのことを知ってもらう講義や体験実験(くすり教室)を行っています。2014年度からは、薬物依存に関連する講義や体験実験も行っています。
2025年3月26日~29日
- 日本薬学会第145年会(福岡)
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「日本薬学会第145年会」が、「薬学エコシステムの推進:異分野連携で拓く未来のイノベーション」をテーマに、福岡国際会議場、マリンメッセ福岡B館、福岡サンパレスで開催されました。本年会では、異なる部会、学会、国、業種、研究手法、世代などの様々な垣根を超え、お互いの情報を交換し、お互いをよく理解し、お互いの繋がりを強く・深くすることで、従来の垣根を超えたさらなる異分野連携を推進することを目的としています。8,000名を超える参加者があり、活発な討論・議論が行われ、盛会裏に終了しました。
当室からは野田幸裕教授、学部5年の井指孝一が一般演題(ポスター)にて発表を行いました。いずれの発表でも発表時間の終了まで多数の質問を受け、大変盛況でした。井指は今回初めて学会に参加し、精神科病棟に勤務する薬剤師や保険薬局の薬剤師から研究成果の解釈や今後の展望について多くのご意見をいただくことができました。特に、将来の医療従事者となる薬学生に対する教育プログラム(例: 認知行動療法の技法を取り入れたロールプレイなど)の具体案について、意見交換を行うことができました。一方で、他研究室の同期との交流も新たな刺激となり、お互い励まし合う機会となりました。
一般口頭発表(医療系)の「薬物治療学⑤(臨床)」では、新たな知見としてクロザピン服用による流涎の量と頻度には、服用量、期間や精神症状との関連性よりも、服用方法が強く関連していることが報告されました。特に「夜間のみに服用」することで流涎が有意に減少し、症状が緩和される傾向があることが示されました。実際に発表を聞く中で、臨床研究におけるClinical QuestionやPICOの設定、対象選定、主要評価項目の明確化、統計手法の選択など、研究デザインの具体的なイメージを膨らませる機会となりました。
本年会で得られた知見を今後の研究・臨床活動に活かし、より一層精進したいと思います。
(報告者:井指孝一)
【一般演題(ポスター)】
野田幸裕(3月28日)「2023年度薬学共用試験OSCEの解析結果と2024年度OSCEの結果速報、および薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)に対応したOSCEへの取組」
井指孝一(3月28日)「薬学生、薬剤師や精神疾患患者における精神疾患に対するスティグマに関する調査」
2025年3月17日(月)~19日(水)
- APPW2025(第130回日本解剖学会/第102回日本生理学会/第98回日本薬理学会合同大会)(千葉)
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「APPW2025(第130回日本解剖学会/第102回日本生理学会/第98回日本薬理学会合同大会)」が「協奏の未来へ~生命を探る・解く・護る~」をテーマとして、幕張メッセにて開催されました。本合同大会は生命を構造・機能面から探り、新たな治療法を開拓することを目的に、基礎医学領域の発展の場として提供されていります。
当室からは博士課程1年の加納正暉が一般演題(ポスター)およびshort talkにて「The mutant of Pcdh15, a gene associated with bipolar disorders (BD) induces BD-like behavioral and synaptic transmission abnormalities in mice」と題して発表を行いました。英語でのshort talkは初めてであり、とても貴重な経験となりました。ポスターでは多くの研究者から質問を頂き、モデルマウスの妥当性や病態生理について活発に議論を行うことができました。
シンポジウム:「ストレス研究の新潮流:ストレス応答と病態形成メカニズムの解明へ」では統合失調症やうつ病などの精神疾患には脳内のサイトカイン濃度の変化の他に、脂質異常が関与する可能性があるという新たな知見を得ることができました。
なお本会におきまして加納正暉はGraduate Student Presentation Awardを受賞しました。この受賞は、今後の研究の活力となり、益々研究活動に精進していきたいと思います。
(報告者:加納正暉)
【一般演題(ポスター)・short talk】
「The mutant of Pcdh15, a gene associated with bipolar disorders (BD) induces BD-like behavioral and synaptic transmission abnormalities in mice」
2025年3月16日
- 第34回神経行動薬理若手研究者の集い
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「第34回神経行動薬理若手研究者の集い」が「ひらく」をテーマとして、お茶の水女子大学にて開催されました。本会は若手研究者の育成を目的に、基礎生物学研究と行動薬理研究を融合させることにより高次生命現象やそのシステム破綻による疾患発症を理解し、各神経精神疾患の治療薬開発に貢献するための議論の場として提供されています。
当室からは博士課程1年の加納正暉が一般演題にて「双極症関連遺伝子であるPcdh15遺伝子変異がマウスの精神行動やシナプス伝達に与える影響」と題して口頭発表を行いました。発表後には脳内モノアミンやアミノ酸変化と行動変容との関連性など、多数の質問を頂くことができました。
シンポジウムでは「モデルマウスを用いたタウ蛋白代謝におけるオートファジーの役割の解明」について拝聴しました。オートファジーはリン酸化タンパク質の分解に関与しており、オートファジーの阻害がアルツハイマー病の病因であるリン酸化タウタンパク質を増加することからアルツハイマー病の発症に関与する可能性を学ぶことができました。
本会を通して神経・精神疾患の機序の解明には行動薬理学を含め、種々の実験手法を融合することでより詳細な検討を行うことができ、融合研究の重要性について学ぶことができました。本会で得た多角的な視点を今後の研究活動に活かし、より努力していきたいと思います。
(報告者:加納正暉)
【一般口頭演題】
加納正暉(3月16日)
「双極症関連遺伝子であるPcdh15遺伝子変異がマウスの精神行動やシナプス伝達に与える影響」
2025年4月1日
- 2025年度 鶴舞公園にてお花見:桜の下でひととき
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例年3月下旬~4月上旬に見頃を迎える鶴舞公園に、恒例の「2025年度 お花見」に出かけました。雨の予報でしたが、野田幸裕教授、𠮷見 陽准教授をはじめ、博士課程2年の加納正暉先輩、学部6年9名、学部5年6名、およびアリゾナ大学からの留学生(Crystal Voさん)の総勢19名が参加し、春を感じる桜の木の下で笑顔あふれる記念写真を撮影することができました。
撮影後は留学生と鶴舞公園桜まつりに出店している屋台にて唐揚げやたまごせんべいなどを堪能し、ソメイヨシノなど約750本の桜が咲き乱れる情景風景は春を感じることができました。
今年度も引き続き親睦を深められるような機会を設け、充実した研究室生活が送れるよう精進して参ります。
(報告者:河合晃佑)
2025年3月18日
- 2024年度 卒業式:学部6年生への記念品授与
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「2024年度 名城大学卒業式」が愛知県体育館にて、「令和6年度 薬学部学位授与式」がヒルトン名古屋にて開催されました。
当室からは、薬学研究科博士課程(4年制)第10期修了生として1名、6年制薬学部第14期卒業生として5名が卒業しました。学部卒業生の加藤朱莉先輩、加藤拓真先輩は研究の功績で学長表彰を受けました。先輩方には研究・アドバンスト臨床活動において様々な場面で丁寧にご指導頂き、大変お世話になりました。
後輩一同より、今までの感謝の気持ちを込めて記念品としてアルバムを贈呈しました。先輩方が当室から去ることに寂しさを感じますが、今後も先輩方に倣い、研究・学業ともに懸命に取り組むことで当室を盛り上げていきます。卒業生の皆様が「病態解析学Ⅰ」で培った経験を活かし、益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
(報告者:内山智絵)
2025年3月7日
- 2024年度 6年生送別会:感謝の気持ちを胸に、新たな一歩を
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「2024年度 6年生送別会:感謝の気持ちを胸に、新たな一歩を」が、素材食房 酔家 Suikaにて開催されました。
今年度は、博士課程1名が修了し、学部生6名が卒業されます。野田幸裕教授、𠮷見 陽准教授をはじめ、博士課程1名、学部卒業生3名、学部5年6名、および学部4年6名の総勢18名が参加しました。野田幸裕教授の挨拶から始まり、先輩方と当室での生活を振り返りながら、談笑を楽しみました。温かく和気あいあいとした雰囲気の中、卒業される先輩方から今後の活動に向けた励ましのお言葉を頂くとともに、卒業される先輩方に感謝の気持ちを伝えることができ、心温まる楽しい会となりました。最後に、𠮷見 陽准教授から卒業生ならびに在学生へ激励の言葉が送られ、研究室一同、身の引き締まる思いとなりました。
先輩方の今後の進路についてお話を伺う中で、自身もそのような姿を目指し、より一層努力していきたいと感じました。先輩方から受け継いだ知識や経験を礎として、在籍する一同協力しながら、卒業研究やアドバンスト臨床研修のさらなる充実と発展に努めてまいります。
これまでお世話になった皆様の新天地でのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
(報告者:御厨ほのか)
2025年2月15日
- 2025年度 第9回研究・大学活性化を目的とした学生フォーラム(名古屋)
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「名城大学 第9回研究・大学活性化を目的とした学生フォーラム」が名城大学薬学部にて、「名城薬の研究活動を活性化させよう〜学生視点から研究について考える〜」をテーマに開催されました。各研究室が学部1~3年生に向けてポスター発表を行い、研究活動への理解を深めてもらうことを目的として実施されました。
当室からは学部5年の永井拓巳が研究コースにて実施している基礎研究として遺伝子組み換えマウスを用いて、精神疾患から見出されたゲノム変異がマウスの精神行動やシナプス伝達に与える影響を中心に、井指孝一と杉浦 豪はアドバンストコースにて実施している臨床・調査研究として薬学生、薬剤師や精神疾患患者の精神疾患に対するスティグマの相違点やβ受容体作用薬が脂肪細胞蓄積に与える影響を中心にブースに訪れた学生に対してポスターにて説明を行いました。基礎研究においては、動物実験・細胞実験ともに研究の目的や手順、薬剤の投与方法について、調査研究においても、研究の目的や調査・解析方法について丁寧に説明し、対応しました。当室の活動内容については博士課程1年生の加納正暉あるいは学部4・5年生が紹介しました。いずれのブースにおいても多数の学部生が訪れており、真剣な表情で研究や活動内容について質問しており、大いに賑わっていました。
本フォーラムに参加し、様々な発表を拝聴することで、研究に対する意欲がより一層高まる有意義な一日となりました。
(報告者:寺林雪乃)
【ポスター発表】
加納正暉、永井拓巳、井指孝一、杉浦 豪、福岡万紘、安田彩乃、寺林雪乃
「研究室紹介 病態解析学Ⅰ」
永井拓巳
「アストロタクチン2(ASTN2)やプロトカドヘリン15(PCDH15)などのゲノム変異マウスの行動学的と神経科学的・組織学的な検討」
井指孝一
「薬学生、薬剤師や精神疾患患者における精神疾患に対するスティグマに関する調査」
杉浦 豪
「クロザピンによる脂肪滴蓄積におけるアドレナリンβ受容体の関与」
2025年2月2日
- 2024年度 スポーツフェスティバル・新年会:5年ぶりに復活!スポーツで深まる親睦
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「第9回スポーツフェスティバル」が、名城大学薬学部 体育館にて開催されました。
今回のスポーツフェスティバルは参加者19名が野田幸裕教授率いる「野田チーム」、𠮷見 陽准教授率いる「𠮷見チーム」、および博士課程1年の加納正暉先輩率いる「加納チーム」の3チームに分かれ、バレーボール、バドミントン、バスケットボールで競い合いました。コロナ禍を経て、5年ぶりに復活したスポーツフェスティバルでしたが、例年に劣らぬ熱戦が繰り広げられました。
𠮷見チームがバレーボール・バドミントンの両競技で1位を独占し、迎えた最後のバスケットボールで逆転のチャンスがありましたが、逆転かなわず、𠮷見チームの優勝となりました。参加者全員が大きな怪我をすることなく、ベストを尽くし、笑顔あふれるスポーツフェスティバルとなりました。
スポーツで身体を動かした後は、塩釜口の「三代目」鳥メロにて新年会を開催しました。会の始めの挨拶として、野田幸裕教授から今年の奮起を期待するお言葉をいただきました。スポーツフェスティバルのMVP(5年 永井拓巳)による乾杯の音頭とともにスタートし、和やかな雰囲気の中、楽しい時間を過ごしました。会の最後には、𠮷見 陽准教授から各学年への激励のお言葉をいただきました。
スポーツフェスティバルを通じて、参加者全員は日頃の研究や勉強から離れ、心身共にリフレッシュすることができ、今後の研究、学業、実務実習への活力を高めることができました。
(報告者:金澤和桜子)
優勝チーム :𠮷見 陽准教授、永井拓巳、井指孝一、尾崎真優、宇藤卓也、御厨ほのか
MVP賞 :永井拓巳
2025年2月25日~28日
- JSTさくらサイエンスプログラムにてシャヒード・モタルマ・ベナジール・ブット医科大学からの短期研修生が名古屋大学医学部附属病院および病態解析学Ⅰを訪問
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名城大学薬学部では海外から数多くの薬学生や薬学臨床教員・研究者を受け入れ、教育と研究の両面で国際的な役割を果たしています。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「さくらサイエンスプログラム」(SSP)で招聘されたパキスタンの「シャヒード・モタルマ・ベナジール・ブット(SMBB)医科大学」の医学・薬学を学ぶ4、5年生6人とヌストラ・シャー学長ら引率教員2人が2月25日~28日までの4日間、生化学実験などの実習、名古屋大学医学部附属病院の訪問を行い、薬学部生らとの交流を深めました。
2月27日には、アドバンストコースの学部5年生の井指くんと野田幸裕教授、𠮷見 陽准教授、名大病院薬剤部の溝口博之准教授と共に院内と薬剤部の見学を行いました。調剤室では、入院患者および外来患者の内服薬や外用薬の調剤方法について説明しました。臨床研修生たちは、薬棚に並ぶ一つひとつの薬剤に対して、その名称や用途について積極的に質問を投げかけ、強い興味を示していました。注射室では、抗がん剤混合調製ロボット、注射薬自動支出システムについて説明し、機械化が進んでいることを説明しました。また、消化器内科病棟にて、病棟担当薬剤師の内田美月先生とともに、消化器内科病棟の特徴、薬剤の管理方法や病棟薬剤師の業務内容として処方内容を医師と協議することを説明しました。処方オーダ、調剤、調製、投与などの各段階において、専門職による確認に加えテクノロジーを利用した何重もの患者安全管理システムが適用されていることに驚きと関心を示していました。
今回、パキスタンの医療状況や薬剤師業務などの共通・相違点を比較することができました。
(報告者:野田幸裕)
2025年1月14、15日
- 米国サンフォード大学薬学部から臨床研修生Eusebio Iglesiasさんが名古屋大学医学部附属病院および病態解析学Ⅰを訪問
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名城大学薬学部では海外から数多くの薬学生や薬学臨床教員・研究者を受け入れ、教育と研究の両面で国際的な役割を果たしています。特に、教員や薬学生の国際的な視野を広げる目的で、米国の南カリフォルニア大学薬学部、サンフォード大学薬学部やアリゾナ大学薬学部との間に学術交流協定を結び、これらの協定大学を中心に国際的な研究・教育活動を実施しています。
米国サンフォード大学薬学部4年のEusebio Iglesiasさんが、日本における臨床薬学教育研修(2025年1月6日~2月7日)の一環として、名城大学薬学部と関連医療施設などで、臨床研修を行います。1月14日と15日には、名城大学の協定病院である名古屋大学医学部附属病院(名大病院)および病院内に設置された名城大学薬学部 サテライトセミナー室 病態解析学Ⅰにて臨床研修を実施しました。
1月14日(火):1日目
1)臨床研修Ⅰ(薬学教育当室・メンバー紹介):サテライトセミナー室にて、野田幸裕教授、𠮷見 陽准教授が当室の活動や研究内容、日本の薬学部のカリキュラムについてスライドで説明しました。その後、和やかな雰囲気の中で当室のメンバーの院生、5年生・4年生がそれぞれ自己紹介しました。名大病院のアドバンストコースの学部5年生2名は自己紹介の中で病棟実習で関わった症例についても紹介しました。臨床研修生は熱心な姿勢で症例報告に耳を傾けていました。
2)和食体験(日本文化の紹介):日本文化の紹介の一環として、昼食にはおにぎりを実際に握ってもらったり、たこ焼きや肉じゃがを試食してもらったりなど、庶民的な和食の理解を深めてもらいました。少し苦戦しながらもおにぎりを握ってもらい、肉じゃがは初めての実食だったため、戸惑いの表情を見せながらも、「美味しい」という感想とともに舌鼓を打っていました。
3)臨床研修Ⅱ(ICUでの研修):アドバンストコースの学部5年生1名と𠮷見先生の付き添いで稲垣孝行准教授が関与しているICUでの研修を行いました。ICUには麻酔科担当薬剤師と麻酔科以外の担当薬剤師が交代で常駐しています。ICUでは他の病棟と比べて病状が激しく変化し、高頻度で検査が行われるため、自作の経過表を用いて、患者のバイタルサインや注射薬の流量などをチェックしていることを説明されていました。緊急性を伴う場合には医師・薬剤師等により事前に合意された薬剤であれば、薬剤師の判断で薬剤投与が行われることが紹介されました。 臨床研修生は肺炎に罹患した患者のカルテを診て「薬剤感受性試験は行われているのか?」「起因菌は何か?」など質問をして、活発に意見交換が行われました。
4)臨床研修Ⅲ(消化器内科病棟での研修):アドバンストコースの学部5年生1名と𠮷見先生と野田先生の付き添いで消化器内科病棟にて、病棟担当薬剤師の内田美月先生に一般的な病棟薬剤師の業務や病棟の特徴を理解していただくための研修を行いました。最初に消化器内科病棟の特徴、麻薬・毒薬および向精神薬の管理方法と、病棟薬剤師の業務内容の説明がありました。次に、抗がん剤治療やその支持療法が実施されている患者において抗がん剤治療に用いる薬剤の投与量を患者の治療歴を参照して監査すること、必要な場合には医師の疑義照会することなどを行うことが説明されました。臨床研修生はこれらの説明を通して、日米における抗がん剤治療の共通点と相違点について質問を交えて理解されていました。特に、患者の副作用状態に応じた細やかな抗がん剤の投与量の調整や支持療法を提案していることに関心していました。
5)臨床研修Ⅳ(臨床研修生によるキャンパスライフと症例報告): 臨床研修生には、サンフォード大学薬学部での薬学教育やキャンパスライフについて紹介してもらいました。サンフォード大学薬学部では日本の薬学生よりも長期間の臨床研修があり、薬剤師業務に関わる機会が多くあり、環境が整備されていることを知りました。次に、副腎不全による低体温症における薬物治療についての症例報告を行なってもらいました。副腎不全におけるグルココルチコイド療法の第一選択薬であるヒドロコルチゾンが、より高い治療効果を得るために経口投与ではなく点滴静脈注射を行う必要があることについて、血中濃度グラフを用いて説明しました。退院後の治療方針や血球などの検査値の表示方法(Fish Lab Values)とその見方などについて質問をしましたが、詳細に非常に丁寧に解説をして頂き、大変興味深く拝聴することができました。
1月15日(水):2日目
1)臨床研究(細胞:セルカウント・継代/動物:ジェノタイピングの体験):当室で実施している医薬統合研究を理解してもらうために、細胞継代(細胞の系統維持)の見学・体験、ジェノタイピングの体験を行ってもらいました。細胞継代では過去に細胞実験を経験していたとのことから、ピペット操作などの手技を思い出しながら行なっていました。これらの臨床研究を通して、当室のトランスレーショナルリサーチによる創薬研究について理解を深めてもらいました。
2)昼食(日本文化紹介):昼食には日本の典型的なカレーを用意しました。臨床研修生は嬉しそうに「美味しい」と舌鼓を打ちながら、和気あいあいと款談し、日本のアニメの話で大いに盛り上がりました。
3)臨床研修Ⅴ(病内・薬剤部の見学):アドバンストコースの学部5年生3名と野田幸裕教授、𠮷見 陽准教授、溝口博之准教授と共に院内と薬剤部の見学を行いました。麻薬の管理方法や抗がん剤混合調製ロボット、注射薬自動支出システムについて説明し、AIの導入が進んでいることに驚いていました。試験室では、液体クロマトグラフィーやタンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いたボリコナゾールの治療薬物モニタリング(TDM)について詳細な説明を受けました。この経験を通じて、TDMの重要性と実施方法に関する理解を深めてもらいました。
サテライトセミナー室に戻って、当室で行っている薬剤師外来(吸入療法支援)について、実際の練習用吸入器を実際に使用して説明し、経験してもらいました。臨床研修生は吸入器に関する知識は豊富で、インチェック(吸気流速測定器)の使用方法について活発な議論を交わしました。この意見交換を通じて、吸入指導の方法が日米で大差がないことから、参加者全員にとって貴重な学びの機会となりました。
4)臨床研修Ⅵ(精神科/親と子どもの心療科での研修):アドバンストコースの学部5年生3名と𠮷見先生と野田先生の付き添いで精神科/親と子どもの心療科病棟にて、病棟担当薬剤師の長岡侑里先生に精神科病棟薬剤師の業務や病棟の特徴を理解していただくための研修を行いました。病棟内では監視モニターや観察室を注意深く観察していました。患者の状態が変化した際に迅速に対応することができるよう、厳重に管理がなされていることが説明されました。また、観察室の紹介の際には、米国の観察室の壁は日本と比べてとても柔らかく、クッションのようになっていると意見を交わし、日米において違いがあることを学びました。
5)日本文化(けん玉、将棋、お手玉、折り紙の体験):それぞれ学部生が横で手本を見せながら行いました。中でも臨床研修生は、けん玉に特に強い関心を示しました。その難度の高さに「難しい」と戸惑いながらも、挑戦を重ねる姿が印象的でした。大皿やとめけんなどの技が成功するたびに沸き起こる歓声と拍手により、場の雰囲気が一層盛り上がり、時間を忘れて日本文化への楽しさに溢れた時間でした。この体験を通じて、臨床研修生は日本の伝統玩具の奥深さと魅力を肌で感じ、有意義な機会となりました。
今回、臨床研修生の名大病院での研修では、双方が日米における医療や薬剤師業務などの共通点や相違点を改めて認識することができました。症例報告などを通して客観的な意見を聞くことができ、今後のアドバンスト活動へのモチベーションアップにも繋がりました。臨床研修生の豊富な知識や積極的な学びに刺激を受けた2日間となりました。
(報告者:井指孝一)
2025年2月9日
- くすり教室「イオン八事店 愛知」
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イオン八事店にて「くすり教室:実験講座」のEプロを開催しました。250209NPO